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CROSS 第21話 『Lieutenant』

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「やったわ!」

 佐世保は思わず喜んだ。彼女が手にしている携帯端末の画面には、「データ転送中」という文字と進行状況バーがはっきりと表示されていた。ハッキングによるデータの取得に成功したのだ。データは、この建物のどこかにあるデータサーバーにあった。
 上社は、書庫のドアの近くに立ち、外の廊下を警戒していた。念のため、部屋の電灯は消しておき、いざとなれば、書棚などの影に隠れてやり過ごすつもりだった。データ転送が完了すれば、さっさとここからおさらばする。データの確認ぐらいは、帰りの無人タクシーでも可能である。



 そのころ、国防事務局の建物横の小道を、ある2人の人物が進んでいた。すると、そのうちの1人が、佐世保と上社がいる書庫の窓を指さしながら
「あの、あそこの電灯がおかしいみたいなので、誰か向かわせたほうがいいですよ?」
と、言い出した……。指をさしている人物は、ピンク色の長髪をしていた……。



「よし、完了したわ!」
上社が思わず嬉しそうに言う。コンピューターの画面には『データ転送完了』という文字が表示されている。あとは、このデータを艦まで持ち帰ればいいわけだ。詳しい情報分析はそれからだ。
「じゃあ、こんな場所からさっさとおさらばしよう」
廊下に出るドアへ歩いていく上社。佐世保は、コンピューターを大事にしまい、彼女もドアへ向かう。

「おい! 誰かいるのか!?」

 上社がドアを開けようとしたとき、そのドアからノック音と呼びかける声がした……。それほど大声ではないが、穏やかな口調ではない。
 佐世保と上社は、思わず飛び上がって驚きそうになった……。おそらく、気づかれてしまったのだ。しかし、ここで慌ててはならない。物音に注意しつつ、物陰へそっと隠れた。

 拳銃を構えたザフト兵が部屋に入ってくる。保安要員らしき2人だ。彼らは部屋の真ん中まで来ると、そこから二手に分かれて捜索を始めた。
 書庫の広さは、約10メートル四方あったが、整然と並んでいる書棚のせいで、見通しが良かった。こっそり逃げることはできず、このままでは発見されてしまう……。
{倒さなくちゃいけないわね}
佐世保はそう結論づけると、少し離れた場所にいる上社に目配せする。彼も同じ考えらしく、何やら本棚を調べていた。そして、良案が浮かんだのか、彼女に手招きする……。