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CROSS 第21話 『Lieutenant』

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 上社の予想は、見事に当たった。大収穫だった場所は、駐在武官専用の個人オフィスだ。そこは、山口が最後に使用していた仕事部屋だ。

 長期間に渡る篭城をする羽目に陥った場合に備え、非常用の品々が、頑丈な鋼鉄製の箱の中に納められていた。この箱はソファの影に置かれており、山口はこれを放置することにしたらしい。
 箱の中の品々は、水や食料や地図などだけでなく、変装用の服や偽造IDカード作成キットまで入っていた。
 2人はさっそく、この作成キットで、偽造IDカードを作ることにした。さらに、ザフトの軍服を着ていれば、怪しまれることはないだろう。
「この地図は普通のじゃないな」
上社は、箱の中にあった緊急避難用の地図を見て呟いた。その地図は、3D立体方式の超薄型端末だ。建物などが立体的に、紙のような地図上に映し出されている。
「情報源がありそうな場所が載っているの?」
「いや、緊急事態用の隠れ家の場所が記してあるんだ。今も隠れ家として機能しているかどうかまではわからないけどね」
「いざとなれば、ここに逃げ込めばいいじゃない」
「それは駄目だよ。隠密作戦だから、もしもの場合が起きた場合、ここに入るところを見られるわけにはいかないじゃないか」
上社がそう言うと、佐世保はめんどくさそうな表情になり、目的地である国防事務局と最寄りの隠れ家のルートをなぞり始めた。歩いて5分ほどの距離で、あまりの近さに彼女は驚いた。
「こんな近くに隠れ家を置くなんて……」
「裏の裏をかいたんだろ? まだバレていないことを祈ろう」


 旧大使館を出た佐世保と上社は、防衛事務局まで無人タクシーで移動した。あの非常用の品々の中にあったカードを使うことしたのだが、なんとそれも偽造したものだった。タクシーのコンピューターがそれに気づかなかったことがわかると、2人は心の中でほっとした。
 車内で2人は、未来的な街並みを眺めたり、内蔵スピーカーから流れているラクスという歌手の歌声を聴いたりしていた。会話だが、共通の話題はあまり無く、山口探しの話(もちろん、盗聴対策のため、うまく濁してだが)をするしかなかった。

 2人は無人タクシーを、目的地から少しだけ離れたところで止めた。念のため、徒歩で慎重に目的地に向かうのだ。
 目的地である国防事務局の建物は、厳重警戒態勢の敷地内に建っていた。当然だが、敷地内に入るには、警備兵が常駐しているゲートを通り抜ける必要がある。無理やり通るのは、いくらCROSSでも無理だ。
 2人ともザフト兵に変装していた上に、精巧な偽造IDカードを持っていたのだが、バレたことを考えると、やはり不安だ……。もし正体がバレても、軍上層部は、彼らの存在自体を否定することだろう……。2人が今やっていることは、完全に自己またはCROSSの責任によるものだ。

 ゲートに着いた2人は、そのIDカードを警備兵に見せる。
 すると、拍子抜けなことに、警備兵は疑うことも無く、2人を敷地内へ入れてくれた。2人とも、ほっと安心した様子を見せてしまいそうだったが、なんとかそれをこらえる。