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CROSS 第21話 『Lieutenant』

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第2章 脱法入国



【場所】…同世界
     プラント 旧日本大使館



 佐世保と上社は、旧大使館の転送装置に出現した。こちらの転送装置にはホコリが積もってしまっており、舞い上がったホコリに2人はせき込む。そして、すぐに拳銃を抜くと、周囲を警戒しながら、転送装置から降りる。
 こちらの転送装置は、ちょっとしたロビーのような場所に置かれていた。しかし、非常灯と転送装置の光だけで、ほとんど真っ暗であった。そこを慎重に歩く2人。隠密行動のため、ここの明かりをつけるわけにはいかなかったのだ。
「おっと」
暗闇のせいで、上社は転がっていたイスで転びかけた。2人は、暗視機能もある特殊ゴーグルを持ってこれなかったことを悔やんだ。身元がわかるようなハイテク製品を持ってこれなかったことも、隠密行動のせいであった。

 しかし、暗闇に目が慣れてくると、だんだんその場の様子がわかってくる……。
 別に死体が転がっているわけではなかったが、そこは荒れ果てていた……。イスや机があちこちに転がっており、開けっ放しのスーツケースや書類などで床がかなり埋め尽くされてしまっている。 この部屋だけでなく、廊下や他の部屋も同様であった。この大使館が閉鎖に追い込まれるまでがよくわかる……。その情景が頭に浮かぶ……。
 避難のために殺到する邦人。在外公館とはいえ敵国での仕事を、死ぬ気の思いでこなす大使館員たち。そして、駐在武官としてここに着任していた山口が、警備兵とともに大使館を守る姿。


「さて、どこからあたろうかしら?」
倒れかかっていた棚から見つけたプラントの地図を長机に広げ、佐世保がすぐに呟く。
 山口の手がかりは、プラント中枢部で見つけられそうだが、どこの施設が有力かなどは、まったく検討がつかなかった。なにせ、CROSSで一番プラントのことを知っているのは、駐在武官だった山口本人なのだ。佐世保と上社は、一般人レベル程度のことしか知らなかった……。
「とりあえず、あの情報将校が言っていた国防事務局というところにいってみよう」
「事務局といっても、厳重な軍事施設なんでしょうね。簡単に潜入できるかしら?」
上社が指差した場所を見た佐世保は、頭をひねる。
「この大使館に何か使えそうなものが残っていないものかな?」
上社は周囲にある棚や床を見回す。しかし、あるのはホコリなどのゴミと、任務には無関係の物しかなく、彼は落胆していた。
「閉鎖するときに、大事なものはすべて持って帰っちゃっているでしょ」
「でも、大混乱になっていたぐらいだから、置き忘れた物があるかもしれないよ」
彼女は落胆した様子を見せていたが、彼はあきらめる様子を見せることはなかった。