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「やりましたね」
佐世保と上社に、ヘーゲルが立っていた。いつの間にか見にきていたようだ。やはり彼も気にしているようだ。
「ただ、あちらさんたちは、不完全燃焼を起こしたようです。八つ当たりされないよう、気をつけてください」
どうやら、スクリーン上の戦闘が終わったので、様子を伺いにきたらしい……。

　データの確認に夢中で気がつかなかったが、友軍とザフトの戦闘は終わっていた。
「味方の勝利だ！」
「いや、ザフトの連中が勝ったのさ！」
何があったのかはわからないが、勝敗がわからないらしい。双方とも、自分たちの勝利だと、一方的に宣言しているだけだ。そのせいで、このシェルター内で激しい論争が巻き起こっていた。
　わざわざ熱い論争する理由は、賭けの分配がかかっているからだ……。友軍の勝利を信じている者たちは、そちらに賭けた連中である。もちろん、その反対もしかりだ。
　単純に彼らは、賭けの参加者として言い争いをしているというだけなのだ……。
「これは、公式見解がどうなるかわかりませんね。下手すれば、不明のまま終わるかもしれません」
ヘーゲルは、苦笑いしながら言う。
　殴り合い寸前の不穏な雰囲気に、佐世保と上社も苦笑いするしかなかった。仕事中の者たちは、呆れた表情で見ている。

「公式の見解が出るまで、賭け金は私が預かっておく！」
胴元である大使は、そんなことを言い出した……。
「そんなのありかよ！！！」
「持ち逃げする気だろ！！！」
当然、非難の声をあげる参加者たち。
「名誉ある大使である私に向かって、なんということを言うのだ！！！　無礼極まりない！！！」
堂々と胴元をやっている男が言うセリフではない……。非難の声が、さらにあがる。
　このままでは危ないと思ったらしく、大使は焦り顔で、賭け金入りの段ボール箱を運び出した。
「おい逃げるな！！！」
勇敢な警備兵が、大使の背中に飛びかかる。
「うわ！！！」
弱々しい痩せ形の大使は、そのままうつ伏せに倒れた……。
　その拍子に、段ボール箱にある紙幣が、大量に宙を舞う……。
「拾え拾え！！！」
「賭け金は返してもらうからな！！！」
殺到する参加者たち。ヒラヒラと舞う紙幣を、乱暴に掴んでいく。どさくさにまぎれて、賭け金以上の金を手にする者もいた……。現金の掴み取りパーティでも開かれているかのようだ。
「憲兵！！！　憲兵！！！」
大使は必死に叫びながら、金を取り戻そうと奮闘する……。