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CROSS 第21話 『Lieutenant』

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「ヘーゲルさん。つい先ほど戻りました」
「ああ、お疲れ様でした」
一度振り向いて返事をすると、再び顔をスクリーンに向ける。ちょうど、同盟軍のモビルスーツが撃破された瞬間だった。
「山口さんの情報は得られましたか?」
「たぶんね。中身をまだ確認していないから、なんとも言えないけど」
携帯端末を取り出した佐世保。ヘーゲルはそれを一瞥する。
「ここのコンピューターを使えばいいでしょう」
彼はスクリーンを観ながら言った。今や彼の心は、スクリーンの中のようだ。

 ヘーゲルはそう言ったものの、シェルターにあるコンピューターは、すべて使用中になっている。
「友軍後退中。残存戦力を集結させている模様」
「新規の暗号を確認した。解読班を呼んできてくれ」
現状確認や無線傍受をこなすデスクワーク派の軍人たち。当直だが、スクリーンの戦場に夢中な連中と違い、真面目な者たちのようだ。
『マジな戦争をやってる!』
ほとんどの者が仕事をする中、SNSでいちいち「報告」する不届き者も一部いた……。一歩間違えたら、機密漏えい罪になるだろうが、こういう輩は無知なものだ。

 佐世保と上社は、そんな不届き者からコンピューターを奪取することにした。遊びで使っているのだから、力づくでどかしても、さすがの海軍も波風は立たないだろう。ただ、1番面倒くさくなさそうなヤツにする。
「ちょっとどいてくれる?」
「なんで?」
上社が声をかけた相手は、彼に不満げな顔を向ける。軍艦よりも子供部屋が似合いそうな風貌をしている男だ。ブサ面も去ることながら、弱者には強気ですという態度を見せつけている……。言うまでもなく、上社は弱者ではない。
「急いで大事なことをしなくちゃいけないから、コンピューターを使わせてほしいんだ」
下手に出てやる上社。
「え〜? おれも大事なことをしているんだけど〜?」
つけあがるブサ面。この気持ち悪い表情と口調から考えると、慰安所の天使たちからNGを喰らっていることだろう……。

「くだらないこと言うな!!! 顔を洗って、少しでもマシな顔にしてこい!!!」
この威勢がいい怒鳴り声は、佐世保のものだ。突然の怒声に驚愕したブサ面は、弱々しい子犬のように、その場からどこかへ逃げていった……。
 この怒声と逃げるブサ面を、周囲の者たちが見ていた。彼らは、無様なブサ面を指差して笑っていた。どうやら、身内から嫌われているヤツだったらしい。
「陸軍のお嬢さん! よくやった!」
佐官クラスの海軍将校が、佐世保を褒めてくれたほどだ。