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CROSS 第21話 『Lieutenant』

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 シェルターは、大使館の地下にあった。そこは、単純な防空壕のような場所ではなく、高性能なコンピューターが何台も置いてある立派な大部屋であった。映画でよく見かけるハイテクな司令センターと大差ない。いざというときは、臨時の司令部として使われるのだろう。これが国際法に抵触するのかは、わからないことだが……。
 その大部屋には、大使や警備兵だけでなく、CROSS隊員たち全員がいた。

「よしそこだ!!!」
「どこ狙っているんだ!?」
口々に叫ぶ彼らの目の前には、大型スクリーンがあった。その画面には、激しい戦闘の様子が表示されている。見下ろす形だが、臨場感のある映像だ。
 どうやら、魔力式ステルス処理が施された軍事衛星からの映像らしい。リアルタイムの戦場の様子を、ここで戦争映画のように鑑賞できるというわけだ。同盟軍と敵軍との戦いであるにも関わらず、ここにいる人々は、まるで他人事の調子だった……。

「おい!!! おまえらに1万円賭けてんだぞ!!!」
「俺なんて3万円だ!!! 絶対に負けるんじゃねえぞ!!!」
しかも、観戦だけでなく、勝敗をめぐっての賭けまでやっていた……。
「しかし、かなり集まったな」
胴元は、あの大使であった……。彼の前にある段ボール箱には、予想を書いた紙とお金が入った封筒が、山のように入っていた……。非番の警備兵だけでなく、CROSS隊員も何人か参加しているようだ。

 過熱する一方、大型スクリーンの正面に立つヘーゲルは、映像を冷静に眺めている。テレビでニュースを真剣に観ているみたいだ。
「あのモビルスーツは新型ですね。後で情報収集をしなくては」
軍人としてはこれが普通なのだろうが、彼は分析をおこなっていた。
「我が軍のよりも質は劣るが、良いレーザー弾です。そう思うでしょう?」
「はぁ……」
彼の横にいる隊員が、ヘーゲルの呟きにあいづちを打っていた。めんどくさそうな表情だ……。その隊員はヒラなので、その場から立ち去ることは難しいだろう。


 そんなシェルターに、佐世保と上社がやってきた。2人とも、熱気で満ちた雰囲気に圧倒されているようだ。
「のんきなものね……」
「俺たちが戦っている相手なのにな」
2人は、熱狂する人々をかき分け、ヘーゲルの元へ向かう。彼はまだ呟き続けていた。