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CROSS 第21話 『Lieutenant』

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「……本当にそうだとしても、あんたたちの上官を連れてきてくれないか? もう山口さんが死んでいるっていう話なら、ヘーゲルさんでもいいけどさ」
デブ男は半笑いでそう言った……。どうやら彼は、佐世保と上社が、山口の情報収集に出かけたことを知っているようだ……。
「このデブ!!!」
デブ男に殴りかかろうとする佐世保……。彼女は、つい先ほど不謹慎な話をしたことを忘れたのだろうか……。
 ギリギリのところで上社が制止したのだが、驚いたデブ男は、イスごと仰向けに倒れてしまった……。
「うわ!!!」
ガシャーンという大きな音がして、職員たちや民間人が一斉に見る……。
「すぐにうちの上官を呼んできますので!」
上社は佐世保の手を引っ張る形で、その場から立ち去った。非常にどうでもいいことだが、そのときの彼女の表情は、まんざらでもないメスの顔だった……。


「ダメだよ。アレでも外務省の役人なんだがらさ」
オフィスから少し離れた廊下にきた佐世保と上社。
「私たちの苦労も知らずにあんなことを!」
「まあまあ。それより、ヘーゲルさんを探そう」
「あの人、どこかしらね?」
大使館に戻ってきたが、ヘーゲルの姿は見えない。それどころか、CROSS隊員の姿も見えなかった。
「……外にもいないようだな」
窓から敷地を見渡してもいない。
「勝手に帰っちゃったんじゃないわよね?」
「まさか! 俺たちの艦は、ガリアさんたちが持っていっちゃっているし、民間船に全員が乗るのは難しいと思うよ。それに、さっきのデブがヘーゲルさんをと言っていたじゃない」
少なくとも、彼がこの大使館にいるのは間違いなかった。

「すみません。俺たちと同じ制服を着た奴を見かけませんでしたか?」
探し始めた矢先、ちょうど目の前を通り過ぎた女職員に話しかけた上社。彼と同じぐらい若いが、顔レベルは中の下だ。イケメンキャラな彼に話しかけられた女職員は顔を赤らめていた。わかりやすいメスの顔だ……。
「……CROSSの人たちでしたら、シェルターのほうへ向かわれましたわ」
天井にぶら下がっている小さな液晶版を指差す女職員。『シェルター』という文字と矢印が表示されている。
「ありがとう!」
「は…はい!」
「ほら、さっさと自分の仕事に戻りなさいよ!」
最後に喋ったのは佐世保だ……。彼女は女職員を睨んでいた。なんともわかりやすい女である……。
 佐世保と上社は、天井の液晶版を頼りに、シェルターへと歩いていった。