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CROSS 第21話 『Lieutenant』

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第4章 見物



【場所】…同世界
     パナマ 大日本帝国連邦大使館



 転送室には誰もいなかった。だが、騒々しさが、部屋の外から響いてきている。そこで転送室から出てみると、大使館は出かける前と違い、大混雑に陥っているのがわかった……。

 この大使館は、世界から出るための出界手続きを代行しておこなっている。そのため、旅行シーズンは大混雑するらしい。しかし、今は旅行シーズンではない。
「おい、早くしろ!!!」
「私が先よ!!!」
どうやら、大急ぎで脱出したい民間人たちらしい。世界情勢の急変があったに違いない。
 パニック状態の人々が詰めかける受付。てんてこ舞いのオフィス。手続き待ちの人々でごった返す待合室。観光客だけでなく、ビジネスマンもいる。
『現在、地元軍とザフトとの間で激しい戦闘が繰り広げられています。衛星からの映像によりますと、ザフト側が優勢の模様です』
何台かある大型テレビは、この世界での戦争のニュースを淡々と伝えていた。テレビの前にいる人々は、必死の表情でそれを見ている。この世界のアラスカで起きている激しい戦闘の影響で、出国を希望する人々が急増したのだ。

「大変だね。軍人も文民も」
オフィスを右往左往している職員の姿を見て、上社は呟いた。
「それより、この中身を早く確認しないと」
佐世保は、携帯端末が入ったポケットをポンポンと叩いてみせる。
 情報は新鮮さが命だ。それに、情報流出がバレたことにより、なんらかの対策を取られる可能性がある。

 忙しい職員を尻目に佐世保と上社は、空いている高性能なコンピューターを探すために、オフィスを歩き回る。だが、どれも使用中だ。職員は大急ぎで、出界手続き処理をこなしている。
「おいおい!!! そこのあんたたち!!! 何やってるんだい!!!」
突然、大量の書類が乗ったデスクから声をかけられた。そこにいたのは、管理職のデブ男だ。堂々と歩き回っていた2人が気になったらしい。2人は、このデブ男に話をつけることにした。
「すみません。空いているコンピューターを探していまして。どこかに空いていませんか?」
近くにきた上社がそう言うと、デブ男は呆れ果てていた。
「この忙しさから、空いているコンピューターが無いことぐらい、わからないのか?」
白人のデブ男は、両手をオーバーに広げて、忙しさをアピールする。しかし、上社が簡単には引き下がらない男だ。
「軍事上の非常事態です。申し訳ありませんが、どかすなりにして、我々にコンピューターを貸していただきます」
本当は山口探しのためだが、上社は大袈裟に言ってみせた。