放課後のパティシエール。
●少し時は遡り、オレが家庭科室に向かっている最中
辻 あー…どーすっかなぁ……女の子と放課後に二人っきりで料理出来るのはすげー楽しいことだからそれを棒に振るのは勿体ない。うーん……まぁ適当に味見して軽く指摘すれば何とかなるか。クッキーがぞこまで不味くなることなんてないだろうからな…
桃 あの…
辻 うわっビックリした
桃 辻先輩ですか?
辻 そうだけど…だれ?
桃 案乃嬢桃です。あなたの知っている案乃嬢薫の実の妹です。よろしくお願いします
辻 は、はぁ。よろしく
桃 はい
辻 …で、何か俺に用?
桃 まぁあるっちゃありますね
辻 なんだその言い回しは
桃 単刀直入に言います。
友人さんを私に譲ってください。
辻 はぁ?
桃 あ、やっぱりだめですか?
辻 いやいや、そーいうことじゃねーよ!
桃 やっぱり辻先輩は友人さん一筋ってことですか
辻 何いってんだよ!
桃 流石一筋だけあって一筋縄ではいかないですね
辻 ……
桃 ボケたんですから笑ってください
辻 ボケだったの!?
桃 私なりのコミュニケーションです。
辻 なんだよそりゃ…それに俺はあいつのただの友達だ。お前の考えるような関係じゃ…
桃 じゃあ、私の姉なんてどうでしょう?
辻 はい?
桃 案乃嬢桃の姉、案乃嬢薫。もしかしたら私のお義理兄さんになれるチャンスかもしれませんよ?
辻 悪い。言ってることがさっぱりだ…
桃 つまりですね。私に友人さんを譲る代わりに、姉の事を貰ってください。
辻 ……
桃 あのー分かって頂けました?
辻 お前、友人のこと好きなの?
桃 ええ
辻 どこが?
桃 顔です
辻 うん。帰る。
桃 待ってください!話が途中ですよ!
辻 うるさい!俺はお前の姉貴に呼び出されて忙しいんだ!
桃 はっ!!流石手が早いですね!私が計画を練っている間に、もうすでに姉に手を出していたなんて!
辻 ちげぇーよ!てかそもそもなんで俺が案乃嬢と付き合わなきゃならないんだよ
桃 私も案乃嬢です
辻 紛らわしいな!
桃 姉も友人さんが好きなんですよ
辻 は???
桃 姉妹揃って同じ人を好きになったわけです。もうお終いですよね。
辻 …
桃 笑ってくださいよ
辻 笑えねーよ。もう、俺は行くぞ
桃 ちょっと!どこいくんですか!
辻 あんたの姉に、お菓子作り手伝わされに家庭科室いくんだよ
桃 お菓子作り?
辻 ああ。つまりそのお菓子を渡す相手は友人ってわけか…
桃 なるほど……ひらめきました!
辻 何が?
桃 とりあえず私これから教室行って友人さんと一緒に家庭科室に行きますね!
辻 んん??
桃 辻先輩は姉といい感じにお菓子でもなんでも作っててください!
辻 は、はぁ
桃 それではまた後程、家庭科室で!!
辻 なんだったんだあいつ
●家庭科室にて、時は戻り辻と薫のお料理教室。
薫 あーーーーーもう無理!!
辻 おい、何適当に砂糖入れてんだ
薫 なんでこんなチマチマと料理しなきゃいけないのよ!
辻 そんなことないだろ?ただ決められた分量を決まられた順序通りに入れるだけなのに、どーしてそれができないんだ
薫 料理なんてニュアンスと感性と発想力でしょ!?
辻 何の知識だよ
辻 (さっきの妹といい、なんなんだこの姉妹は……しかし、この案乃嬢が友人のためにクッキーを作ろうとしてるのか…うーん。)
辻 それはそれで確かに可愛いかもしれんが
薫 何キモいこと呟いてんだ
辻 先生に向かってキモいとはなんだキモいとは!
薫 はーい、すいませんでしたせんせー
辻 お前な!
薫 ……ねぇ
辻 なんだ?
薫 今もお菓子作ったりしてるの?
辻 ……
薫 ……あー、聞いちゃまずかった?
辻 いや、別に
薫 ちょっと…気になってさ。
辻 ここ何年作ってないよ
薫 でも家庭科の授業で作ってたのは?
辻 あれは授業だったから
薫 なるほどね…
辻 案乃嬢はさ、お菓子作ってて楽しいか?
薫 え?あー…まぁ作ったのを喜んでもらえるのは嬉しいかな
辻 そっか。
薫 うん。
辻 案乃嬢は、今作ってるクッキーをさ、食べてもらいたいって思う人がいるんだよな
薫 ま、まあね…
辻 だったら俺はそれを全力で応援するよ。
薫 ……
辻 さ!バレンタインまで時間がねぇーぞ!続き続き!
薫 そうだね。
作品名:放課後のパティシエール。 作家名:月とコンビニ