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月とコンビニ
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雑草のはなし

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○映像は消えたまま【雑草の話】
舞台が冷たく明るくなる。冬の公園である。炊き出しが行われている。
男3が椅子に座っており、男4は舞台の隅に座り込み、じっと男3を見つめている。
○男5イリ、手には豚汁を持っている
男5  やあ、ヨシさん来てたか。
男3  おお、マツ。
男5  となりいいかい。
男3  かまうなよ。
男5  じゃ、失礼して。
男3  …ああ、美味い。
男5  もうすっかり冬だな。
男3  ああ。
男5  この一杯がありがたいねぇ。
男3  こんな俺らの為になぁ。
男5  あったまるよ、ほんと。
男3  …。
男5  最近、調子はどうだい。
男3  どうもこうもないなぁ。
男5  近頃、ダンボールハウスの撤去が多いって聞くがな。
男3  うちは先週やられたよ。
男5  あちゃあ、やられたあとかい。
男3  これから寒くなるっていうのになぁ。
男5  うちも、一旦たたんで移動すっかぁ。
男3  日銭の方は。
男5  調子悪いな、最近は街がてんで綺麗になっちまった。紙資源も空き缶も自治体のもんだ。落っこちてないよ。
男3  そら、えらいこっで。
男5  ヨシさんの方こそどうよ。確か、自立支援団体の、雑誌を売る仕事をしてるんだろう。儲かるもんかね。
男3  ホームレスの売る雑誌を、どれほどの人が買いたがると思う。
男5  …そうか。
男3  そうだよ。
男5  ……いかんいかん、明るく生きにゃな。
男3  …雪、降ってくるかなぁ。
男5  冬か…。
男3  ああ。
男5  ヨシさんの雑草めしも、しばらくは休みか。
男3  まあ、これからはな。
男5  でも、良く好んで雑草なんて食べるよなぁ。
男3  美味いんだぞ。
男5  俺は、ヨシさんみたいに雑草を見る目がないからな。
男3  お前そりゃ、見ようとしてないだけだ。
男5  そうかね。
男3  あれ、ひとつひとつちゃんと名前あるんだぞ。
男5  いや、それはわかるけど。
男3  俺らと一緒だ。
男5  …俺らとか。
男3  ああ。
男5  ヨシさんの言うことはさっぱりだ。
男3  …いいか、俺達はホームレスだ。
男5  なにをいまさら。
男3  でも、お前はマツで、俺は俺だ。
男5  まあ。
男3  雑草も同じだよ。
男5  ああ、なるほどな。
男3  ああ、そうさ。
男5  …ヨシさん。
男3  ん。
男5  さっぱりだ。
男3  …それがマツの味なんだろうなぁ。
男5  お、きたな。美味いのか。
男3  えぐみが無くて食べやすい。でも味気ない。
男5  なんじゃそりゃ。
男3  馬鹿ってことだ。
男5  毒があるなぁ。
男3  ま、そのマツの味も、マツに光を当てなきゃ味わえないってな。
男5  お、なんかそれはいいな。
男3  そうか。
男5  ああ。
男3  …。
男5  俺達も人間だって気がする。
男3  …そりゃいい。
男5  …。
男3  そりゃあいい。
○舞台が暗くなる、映写機が回り映像が映る。
○男4、いつの間にか消えている。男3・5、ゆっくりとハケ
作品名:雑草のはなし 作家名:月とコンビニ