連載小説「六連星(むつらぼし)」第51話~55話
連載小説「六連星(むつらぼし)」第55話
「東電の火力発電所」
「おかえり。
どうしたんだい、そんなに怖い顔をして。
何か、気に障るものでも見てきたのかい・・・・」
朝食の支度を整えていたおばさんが、あまりにも不機嫌そうな
響の顔を見て、心配そうにのぞきこむ。
響が、ようやくのことで我に返る。
「あ、ごめんなさい。
町の中はまったくの無人状態だと言うのに、6号線の様子に驚かされました。
原発へ向かう、もの凄い車の渋滞などを見ていたら、つい、
頭の整理がつかなくなってしまいました。
ついつい、余計な事を考えはじめていました」
「ああ、Jビレッジ行くための、朝の渋滞のことか。
いつものことだ。ここいらに住む人はもう、慣れっこで驚かないないさ。
連中は朝早くから、Jビレッジ行くためのバスに乗って、
集合場所へ向かうのさ。
作業員は5000人を下らないと言う話だ。
多くの人たちが下道(国道6号)を使わずに、三陸道(高速)を使って
広野までやってくるから、あっというまに6号線で大渋滞をつくる。
珍しくなんかないさ。いつものことだ」
作品名:連載小説「六連星(むつらぼし)」第51話~55話 作家名:落合順平