連載小説「六連星(むつらぼし)」第51話~55話
連載小説「六連星(むつらぼし)」第54話
「広野町の朝」
「う~ん・・・・」
響がふかふかの布団で目を覚まし、気持ちよく手足を伸ばす。
(うわ~。私ったら・・・まったく初めての、人さまのお宅へ
お邪魔しているというのに、完璧に熟睡なんかしています。
まいったなぁ・・・うふっ)
苦笑しながら朝の身仕度を始めた響へ、隣室からおばちゃんの声が
飛んできた。
「おや。起きたかい?
よっぽど疲れていたみたいだね、よく寝ていたよ。
あたしゃ朝ご飯を、あいつの所に届けてくるからちょっと出かけます。
30分もしたら朝ごはんにするから、そのあたりを散歩して来ればいいさ」
じゃあね、と言って玄関の戸がパタリと閉まる。
おばさんが立ち去った隣室には、味噌汁の香りが漂っている。
(これで海苔と納豆があれば、典型的な日本人の朝食だな・・・・)
響がふと見たキッチンのテーブルの上に、その納豆がちゃんと置いてある。
(あらら、ちゃんと準備してあります。さすがですねぇ、やっぱり。)
作品名:連載小説「六連星(むつらぼし)」第51話~55話 作家名:落合順平