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秋月かのん
秋月かのん
novelistID. 50298
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第1章   13話   『とある日曜の家探し』

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最初はまだ寝起きだし、脳がまだちゃんと正常に働いてないからはっきりしてないんだ。
これは、きっと幻覚、そう、幻覚なんだ。最近いろいろあって疲れてるんだ…と思っていた。
が、それも長くは続かず、もう一度、視線を戻すとやっぱりそこにはヒカリがいた。
いくら目を擦っても、いくらほっぺを引っ張っても抓ってもそこにはヒカリがいることには変わりはなかった。

(??????????????)

今の俺の思考を言葉で表すのであれば、これしかない。
え、何コレ、どっきりか??明日香かミナかネタばらしに『ドッキリ』と書かれた看板を持って隠れているのだろうか。それならすぐに出て来い。俺を解放しろ。

これはドッキリでも夢でも幻覚じゃないみたいだな。そう自覚せざるを得ない状況に陥ってしまったのだ。何でここにヒカリが?何で俺のベッドにヒカリが?
と悶々と考えていたらこうして今のこの状況に至るのだった。

それともヒカリのおちゃめな演出か??
いずれにしろこの状況を打破せにゃならん。
特にこいつヒカリと関わるとロクなことにならない。

だってそうだろう?朝、いつものように目が覚めたら俺の腕にしがみ付いている女の子がいた、だなんて普通あるわけない状況なんだからな。ましてやそれがヒカリだったとは…これこそ謎に近い。

これがもし明日香だったら可能性は十分あり得る状況なんだが…まぁあいつは言っても聞く耳持たんからな。そして、ミナも…まぁ、この前の騒動もあるからな、可能性はないとは考えにくい。

でも、明日香もミナも俺を宿か何かと勘違いしてるんじゃないだろうか?
俺は宿主でも大家でもなければ、抱き枕でも湯たんぽでもない。
とまぁそんなことはいいとして、今、この状況をどうしたらいいのか考えよう。

「すぅ…すぅ…すぅ」

寝顔だけはホント天使だな。…いつもこれぐらい可愛い顔してればいいものを。
ヒカリの寝顔を見ていて思わずそんなことを考えてしまう俺であった。

「でもまぁ、このままずっとこうしておくわけにもいかないしな。…しょうがない、取り敢えずヒカリを起こすか」

起こした瞬間、ヒカリの怒りに触れるか叩きのめされるかもしれないが…。
想像しただけでも恐ろしい。でも、誰かにこんなところを見られるよりかマシだ。
そう決めると、覚悟を決めてヒカリを起こしにかかる。

「おい、ヒカリ起きろ」

俺は腕に引っ付いているヒカリを揺さぶってみる。

「う~ん…むにゃむにゃ…うるさい…馬鹿者…静かに…しろ…すぅ…すぅ」

寝言でも俺を馬鹿者呼ばわりし、命令口調で言うのだった。…このお子様が。

「ほら、起きろって。それが無理ならせめて俺の腕を解放してくれ」

こたつに猫のようにしがみ付くヒカリを何とか引き剥がそうと俺はブンブンと腕を振ったり激しくシェイクさせたりしてみる。

「う~ん…邪魔を…するな…むにゃ…てやぁ~…えぇ~い」

「ぐはぁッ!こら、何する…痛ッ!痛いって」

ヒカリは強情にも寝ぼけながらも蹴りを入れたり、グーパンチで抵抗してきた。
…こいつホントは起きてるんじゃないのか?もしかして、ワザとか?そうか、
ワザとか。誰かにこの如何わしい現場を見せ、俺を陥れようという魂胆か。
確かにそれはマズい。

ここには明日香、かえでもいるかもしれん。
冬姫とミナもいつ遊びに来るやもしれんしな。中々唸った作戦じゃないか。ヒカリさんよ。
でもな、いくらお前が強くて魔法使いで、魔法でちょちょいのちょいで何でも出来ても世の中そんなに上手くは出来ていない。そう、お前の意のまま風のままなんて甘くはないのさ。

少なくともまだ物理法則が働いているであろうさ。…俺の勝手な推測だけどな。
でも、そうでなければこの世界はホント何でもアリ、魔法使いやそれに準じる何かで溢れかえってしまってるだろうからな。

取り敢えず今の俺が言いたいのはただ一つ。俺の平穏生活よ、カムバック!!
これは切なる願い、純粋な願いだ。今、流れ星が流れていたらハイスピードで3回願い事を言ってることだろう。夢見がちで可愛い萌え要素だとは思わんか?

これをお見せできないのは実に残念だ。
…まぁ、男の夢見がちじゃ可愛いだなんて思わんな。やっぱ、ここは美少女に限るな。
…おっと、途中からかなり話の脱線をしてしまったが、まぁ、アレだ。

このまま誰かに俺の生活を掻き乱されて流されるままに俺が従うと思ったら大間違いだって
ことだ。こんなところで、こいつを起こせなくて誰かにヒカリと俺の怪しげな構図を見られて
これ以上生活を乱されてたまるか。…何としてでもこいつを叩き起こしてやる。

いざッ!!
俺は力強い握り拳をし、気合が入ったところでもう一度ヒカリの方へ視線を戻す。

「何をさっきから独りで百面相してるのだ。馬鹿か貴様」

「って起きてたのかよッ!!…いつの間に」

俺が振り向くとヒカリは、ベッドの上であぐらをかきながら座っていた。

「フン!私が気持ちよく寝ているところに何か騒々しかったから嫌でも目が覚めるわ。邪魔をしおって、実に不愉快だ…ふぁ~ぅ…むにゃ」

ヒカリは不機嫌そうな顔をしながらも似つかわしいくらいの可愛い欠伸をする。
…でも、ホント機嫌が悪そうだ。

「眠そうなところ悪いが、聞いていいか?」

「ふぁ~ぅ…何だ?」

「何で俺の部屋にいる?ていうか何で俺の家がわかった?答えてもらおうか」

その瞬間、ヒカリはさっきまで眠そうにしていたのがぱっと真剣な表情になった。
…なんだ?マジな顔しやがって。もしかして、また、ヤヴァイ話なのか。

「実はな…」

ヒカリがゆっくりと口を開く。

「…あぁ」

と俺。
俺はゴクリと1回のどを鳴らす。
それが合図になったのかヒカリはその口から真実を告げる。

「…実はな、寝泊りする家がなくてな」

(・・・・・・・・・・は??)

「…悪い、何だって?」

思わぬ発言で俺は思わずヒカリにもう一度聞いてしまった。
…だってそうだろ?

「だから、家がないんだよ!急にこっちに来ることになったからな、用意も何もしてなかったんだよ。だから、私は…」

「待て待て。それじゃそれまでどうしてたんだよお前は?」

おいおい、まさか、もしかして、野宿か?

「学園の屋上があっただろう?あそこで寝泊りしていたのだ。中々、居心地がよかったからな。貴様の家はこの前断られたからな」

…ホントに住みついていやがった。冗談のつもりだったがまさかホントだったとは。

「だが、昨日は雨が夜に降り出しただろう?しかも、小降りになればいいものを私の考えとは逆に強くなってきおったものだからさ。あれにはさすがの私も腹が立ったよ」

プンプンと怒るヒカリは割合可愛かったっていうのはこいつには言わないでおこう。

「それで、仕方なく俺の家に来たってことか?でも、よく俺の家がわかったな」

「フン!貴様、もう忘れたのか?私たち魔法使いは魔力を感知できるっていうことを。この前、話しただろうが」

「なるほどな」

そういえば、そんなこと言ってたな。

「でもよ、別に俺の家じゃなくてもよ。ミナに頼んでミナの家にでも泊めてもらえばよかったじゃないか?」

そうすればミナも喜んだものを。