魔王と勇者の研究室
願いの実行
「服を脱げ」
「嫌です」
唐突にこの悪魔は妙なことを言う。
「心臓をいじらねばならんのだ、死にたくはないだろう?」
「そういう事ならそうと言ってください、唐突に言うと変態ですよ?」
正当な理由が無ければ、大男が少女を脱がすという十八禁である。
「聞くと、心臓のせいでまともに生活も出来んらしいじゃないか」
「ええその通りです、今までベッドの上に居る時間が生活の五分の三ですよ」
「切ねぇ……」
シオンにとっては、本を探し、本を読み、本の通り陣を描き、血を垂らす、この行動は死にもの狂いのハードルであった。
そう考えると、所詮一週間の縁だとしても充実させてやりたいものだ。
「この一週間だけはまともな心臓にしてやるよ、サービスだ」
「出来るんですか!?」
決意と覚悟しか汲み取れなかった瞳であったが、今は輝きに満ちている。
それは恐らくシオンにとって夢のようなものだったのであろう。
年相応に無邪気にはしゃぐ少女はまるで別人であった。
「だから、さっさと脱げ」
深い溜息を吐いてボタンを外し始めた、キラキラと輝いていた瞳は一瞬で損なわれた。
もう少し喜ばせていてもよかったかもしれない。
「まったく、本当は貴様の身体を切り開きたいくらいなのだぞ」
シオンは俯き、沈黙している。
いくら願いのためとはいえ、相手が悪魔とはいえ、異性に胸を触られるのは相当抵抗があった。
「まったく、面倒なお嬢様め……ん?」
「あの……、人の胸の前で執拗に手を動かすのはやめてもらえません?」
シオンの言葉には耳も傾けず、真剣な表情のままである。
「呪いか、厄介なものを持っているな」
「へ?」
服を着ていいぞ、と言ってルインは椅子にどすっと座った。