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誕生日って幸せな日?

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瑞希「修二、ごめん。俺できねぇや。お前のためにこいつ殺したかったけどよ。俺できねぇわ。」

隼人「いいから殺せよ!それが俺の計画なんだよ!」

瑞希「修二は殺すことなんて望んでねぇんだ。で、どーゆーことだよ?お前の計画は俺を殺すことじゃねぇのかよ?」

隼人「そ、そうだよ・・・。僕は君を殺したいんだ・・・。」

隼人の表情がかわる

瑞希「お前、なんかさっきと顔がちげぇみたいだな。」

隼人「そんなことないよ。」

瑞希「嘘が下手だな、お前。なんだよ、言えよ。」

隼人「言わないよ。」

瑞希「それなら、お前はなんで俺を殺したいんだよ?」

隼人「それは、君が嫌いだからだよ。」

木嶋がはしごを登って上がってくる

木嶋「そこまでだ。瑞希君。もうやめてくれ。」

瑞希「瑞希君?ここのやつらはどいつもこいつも気持ちわりーな。」

木嶋「晃明君、もう俺たちの負けだ。ほんとのことを話そう。」

瑞希「ほんとのこと?なんだよ。」

隼人「やめてくれ!」

木嶋「もう限界だ。見てらんねぇ。この人の名前は隼人、これは今の父親がつけた名前で、生まれた時につけられた名前は別にある。それは望。まだピンとこないよな?」

瑞希「なんだよ、それがどうした?」

隼人「やめてくれ。おい、木嶋!やめろ!」

木嶋「この人の本当の親の名前、健三と希望。どーゆーことかわかるだろ?」

瑞希「それは俺と兄貴の生みの親の名前だ。どーゆーことだ?」

木嶋「ん~、まだわかってもらえないか・・・。夫婦は最初の子どもが生まれたとき健三の『健』をとって健、次に双子が生まれたとき希望の『希』をとって瑞希、『望』をとって望と名付けた。単刀直入に言うと、瑞希君と隼人君は双子の兄弟なんだよ。」

瑞希「は?お前も頭いかれたか?」

木嶋「隼人君の父親は現阿部組の親分。子どもはできず、16年前に友人夫婦から双子のうち弟を引き取った。その子は生まれてすぐに脳の病気にかかってしまった。しかし、生みの親はすでに子どもを育てていて、金がない。そこで、当時実業家として有名だった阿部さんがその子を引き取った。言い換えるなら『買い取った』わけだ。名前も『望』から『隼人』に変えた。君のお父さんはこのこと知らないみたいだね。」

瑞希「それがどうした?だからもうやめてくれってか?」

隼人「いや、そんなのどうでもいい。早く殺してくれ。」

瑞希「お前に言ってねぇよ。」

木嶋「どうして、隼人君が君に自分自身を殺させようとしたか、それは隼人君が長くないからだ。実際のところ、誰でも良かったのかもしれないが、殺気に溢れた組長でなおかつ隼人君の双子の兄、最高の条件だろ?君は最高の頭(かしら)になれる。俺だって、隼人君だって確信してる。」

隼人「あ~ぁ。全部ばらしちゃったね。計画ちゃらだよー。」

瑞希「残念だったな。お前、そんなに悪いのか?」

隼人「急に優しくなったね、瑞希君。」

瑞希「ちげぇよ。お前は許さねぇけど、やっぱりさ、殺すのやめ~た。」

木嶋「瑞希君、君を選んでよかった。君ならわかってくれると思ってたよ。」

隼人「彰君はこんなこと望んでないはずだよ。」

瑞希「今、修二に聞いてみたんだよ。そしたら、わかってくれたみたいだった。」

隼人「君、頭大丈夫かい?」

瑞希「こっちのセリフだろ?」

木嶋「やれやれ。」

木嶋は大きなため息をついた

瑞希「俺さ、阿部組に入れてもらえないかな。」

木嶋「もちろん、親分も喜ぶよ。君はあくまでも次期、頭(かしら)、それでいいよな?」

隼人「もう言い残すことはないよ。」

隼人が空を見ながら笑いだす

瑞希「お前、やっぱ頭がパーなのか?」

隼人「イーブンさ。」

木嶋「ゴルフじゃねぇか。」

賑わう3人

瑞希が真顔に戻り、空を見て言う

瑞希「修二、ごめん。」

そして、隼人の方を見て瑞希が言う

瑞希「誕生日、おめでとう。」

ナレーター1「後半へ~続く~(ちびまる子ちゃんナレーション風に)」

場面がかわる
佐藤家の居間だった

ゆり「早くケーキ食べよ!」

父「そうだよな。そろそろ食うか。」

美穂「賛成!って話そらさないで!」

父「だから、別になんでもねぇよ。今まで通り瑞希が『出てく』って言い出しただけだろ。何回言わせんだよ。」

美穂「お父さんが何か言ったんじゃないの?」

父「何も言ってねぇよ。だからあれだろ、反抗期の真っ只中だったわけだろ。」

ゆり「ケーキ食べよ!ケーキ!」

美穂「ゆり、そもそも主役の瑞希にぃいないんだから、私たちだけで食べたら変じゃない?」

父「別にいいんじゃねぇかな。もう今日は帰ってこないだろうし、あいつケーキ好きそうな顔してねぇしさ。」

ゆり「なんかお父さんと話してたらさ、すっごい瑞希にぃと話してる気になっちゃうんだけど、気のせいかな?」

美穂「私もさっきまで瑞希にぃと話してる感じした(笑)」

ゆり「遺伝ってやつ?」

美穂「醤油こと。」

父・ゆり「え?」

ナレーター2「父は2人に事実を決して言わなかった。それは3人のことを考えていたことはもちろんであるが、なにより健と瑞希のことを考えてのことだった。これまで5人のきょうだいを平等に育ててきたつもりであった父にとって大きな罪悪感があったことは言うまでもない。」



場面がかわる
そこは佐藤家の前だった

健が家の前で腕を組んで誰かを待っている
顔や首にあざや傷が目立つ瑞希が足を少し引きずりながら歩いてくる

健「やっと帰ってきてか。結果はどうだ?」

瑞希「この通りだ。もう全部終わったよ、兄貴。」

健「どうせ、仇をうたなかったんだろ?」

瑞希「あぁ、そうだ。俺はまだまだ子どもだ、それを実感した。兄貴ならどうした?」

健が鼻で笑った
健は瑞希の問に答えなかったが、鼻で笑ったことが答えとなった

瑞希「なぁ、兄貴。修二はきっと許してくれるよな。」

健「それを知ってるのはお前のはずだ。」

瑞希「兄貴らしいな。」

笹谷がさきほどとは血相を変えて走ってくる

笹谷「瑞希君、すぐに来てくれ。が、隼人君が・・・隼人君が、飛び降りた。」

瑞希「なんだって?」

笹谷「今木嶋が一緒に救急車に乗って病院に向かった。」

瑞希「あいつ・・・。」

笹谷「あのあと、自分のナイフで目を切って飛び降りたらしい。」

健「どういうことだ?」

瑞希「償いのつもりか?あいつ・・・。」

笹谷「健君、君も一緒に来てくれ。」


ナレーター1「3人は病院に向かった。病院に着いたときはもう遅かった。隼人の死体は血まみれで見るに耐えられないものであった。目は血だらけで右腕は考えなれない方向に曲がっていた。病院で、健は目の前の写真の人物が自分の兄弟であることを初めて知った。」


ナレーター2「後日、葬儀が行われた。何とも言い難い悲しみが彼らを襲ったが、健と瑞希の絆はこれまでよりも一層強く、固いものとなった。葬儀のあと、健は瑞希に家に帰ってくるように言った。しかし、瑞希はそれを聞こうとしなかった。
『家のこと、頼んだ。』
作品名:誕生日って幸せな日? 作家名:しょう