誕生日って幸せな日?
瑞希「ちげぇよ。ただここの風が好きなだけだぜ。」
健「はい、はい。そうですか。それを凹むって言うんじゃないか。」
瑞希「兄貴、わかってねぇな。男には海風をかんじなきゃならねー時があんだよ。」
健「俺だって男だ。」
瑞希「オスの間違いだろ?」
健「うるさい!」
ナレーター1「健と瑞希には互いに心につっかかっていたものがあったが、それを忘れるほど笑った。いや、それを忘れたかったのかもしれない。」
瑞希「兄貴はよ、死んだ人が生き返るってことあると思うか?」
健「そんなことあるわけないだろう。」
瑞希「だよな(笑)俺、どうかしてんだよな。」
健「昔からずっとだろ?生まれた時からずっと。」
瑞希「うるせー」
健「でも、彰君に会ったんだろ?」
瑞希「え?なんで知ってんだよ?もしかしてあの修二って裏で兄貴が映写機で写してたのか?」
健「アホか!そんな制作費あるわけないだろう!お前の表情見ればわかる。でも、彼は生き返ったわけではない。きっと彰君は今でも君の心にいるんだろ?」
健はかっこつけてきったない顔でニコッとして瑞希の胸に拳をあてた
瑞希「オエッ。」
瑞希の反応に健はスルー
健「まぁ、でも彰君の件、最後は自分でけりつけるつもりなんだろ?」
瑞希「あぁ。さすが兄貴だな。けりつけにいく準備はできたぜ。家のこと色々と頼むぜ。」
健「当たり前だ。早く行ってこい。気をつけろよ、瑞希。」
瑞希「まかせろ。」
健「親父と俺たちのことはお前が帰ってきてから美穂たちに話す。」
瑞希「わかった。それじゃあ、俺行くわ。」
瑞希が走ってく
それを健は眺めてく
場面がかわる
そこは佐藤家のリビングだった
健と瑞希以外の佐藤家の人々がいた
美穂「お父さん、どういうこと?」
父「いや、俺にもよくわかんないんだ。」
美穂「え?だって『赤の他人』がどうとかって話してたって聞いたよ?」
父「いや、そんな話してないぞ。勘違いだろ?」
美穂「ゆり、お父さんがこんなこと言ってるけど、ほんとに聞いたんだよね?」
ゆり「うん。確かに瑞希にぃがそう言ってたよ。ゆり、廊下で聞いたよ。」
父「それはいつものように瑞希がわけのわかんないこと言ってただけだろ?てか、ゆり、お前・・・盗み聞きか?」
ゆり「瑞希にぃの声が大きすぎてすっごく響いてたんだもん。それにしてもいつもと違ってすごい深刻そうだったよ?」
父「そんなことないって。ゆりの考えすぎだって。いつも通りのトーンで『出てく』って出て行っただけだって。」
美穂「止めなくてよかったの?」
父「瑞希のことだからまたケロッとした顔で帰ってくるだろ。」
美穂「どこまで能天気なのさ。・・・健にぃが見つけてくれればいいけど。」
場面がかわる
瑞希が事務所に殴り込みをかけていた
瑞希「隼人っちゅーちっさい男の子おらんかね?」
ナレーター1「何人かの若い衆をなぎ倒して隼人を探す瑞希。心なしか関西弁になる瑞希。高校生がヤクザの事務所に殴り込むとはすごいしょ、彼。」
木嶋「隼人君に御用か?」
笹谷「お前のくるとこじゃねーんだわ。帰ってくれ。」
瑞希「わいは隼人の親友の佐藤瑞希っちゅーもんですわ。隼人どこじゃ?」
ナレーター2「相変わらず、若い衆をなぎ倒し探す瑞希。完全に『ミナミの帝王』の見過ぎかもしれない。」
ボロボロになった木嶋・笹谷が言う
木嶋「なかなかやるね。」
瑞希「兄貴譲りのパワーじゃけん。」
笹谷「方言混ざりすぎだろ。」
瑞希「うるせー、はよう隼人の場所教えろ、じゃけん。」
笹谷「無理ありすぎるだろ。」
瑞希「んぁ?」
笹谷「なんでもありません。」
ナレーター1「この演劇では『んぁ?』の乱用がやばい。国際問題じゃけん。」
木嶋「隼人君、ここの屋上で天体観測してるぜ。」
瑞希「一人か?」
木嶋「あぁ。そのはずだ。さっき友達は帰ったはずだ。」
瑞希「仇うってくるぜ。」
木嶋・笹谷が黙る
瑞希を止めることはできなかった
場面がかわる
ナレーター1「多くの物語では主人公が仇をうちに行く場合、悪者が泣きながら『ごめんなさい』で終わるパターンと時代劇などでよくある仇をうって終わるパターンがあるが、この物語はどうなるのか、必見。」
場面は事務所の屋上
隼人が望遠鏡で空を見ている
瑞希が華奢なはしごを登って屋上に上がる
隼人「そろそろ来る頃だと思ってたよ、瑞希君。」
瑞希「予想通りのコメントありがとよ。」
ちらっと瑞希の方を見てまた望遠鏡を覗く隼人
隼人「なんか表情変わったね。」
瑞希「修二と話したんだ。さっき。」
隼人「瑞希君もこっちの世界についに到着かな?」
瑞希「あほか。んなわけねーだろ。」
隼人「瑞希君も星見る?」
瑞希「セカンドあほか。んなわけねーだろ。」
隼人「決着つけに来たんだよね?」
瑞希「あぁ、修二のおかげで迷いもなくなったぜ。これから俺は修二の仇をとる。」
隼人「僕を殺す?」
瑞希「あぁ。」
隼人「僕が死んだら、君のきょうだいはどうなるか知ってるんだよね?」
瑞希「朗報だが、どうやら俺とあいつらは血はつながってねぇらしいんだよ。兄貴と俺は血が繋がってるらしいんだが、親父と妹達とは違うらしいんだ。」
隼人「だから何?」
瑞希「俺とあいつらは赤の他人。もう家族の縁も切ったんだ。」
隼人「そんなの関係ないよ。君の大事な人が死ぬ。そこに意味があるんだ。」
隼人は不気味に微笑む
瑞希「あいつらとはきょうだいじゃねぇんだから俺にとってあいつらは大事じゃねーの。わかった?」
隼人「君頭悪いね。そんなこと言っても僕たちは手を引かないよ。」
瑞希「それなら、話は簡単だ。全員ぶっ殺す。」
隼人「君、売れない漫画の主人公みたいなこと言い出すね。この際だから、特別に真実を教えてあげよ。」
瑞希「何の話だよ?」
隼人「夕方話したあの話にはちょっと違うところがあってね。あの日、僕は君を探して歩いていたんだ。いろんな人に『佐藤瑞希はどこ?』って探し歩いたんだ。そしたら、彰君に会って聞いたらつっかかってきて、『佐藤君に何するんだ?』ってうるさかったんだよ。だから、半殺しにしちゃったんだけど、それでも僕の足にくっついてきて離れないんだよ。だから、頭を思いっきり踏みつけてやったら動かなくなったんだ。のび太だよ、あれ。のび太。笑えるよね?」
ナレーター2「瑞希は涙が止まらなかった。止められなかった。彰はそんなこと一言も言わなかった。瑞希に『ありがとう』とさえ言った。それは瑞希が言うべきセリフだった。」
瑞希「てめぇ!!」
声を荒げる瑞希
涙は止まらない
瑞希は隼人に殴りかかる
瑞希は晃明の胸ぐらをつかみただただ殴る
10発、20発、30発、40発
力は弱まらない
晃明はまだうっすら笑っている
殴るのをやめる瑞希
隼人「もう終わり?止めさしてくれよ。僕のポッケにナイフ入ってるからさ。これ使ってくれよ。」
隼人は震える手でポッケから小さいナイフを取り出す
瑞希はそれのナイフを両手で握り、隼人の心臓めがけて刺そうとする
作品名:誕生日って幸せな日? 作家名:しょう