誕生日って幸せな日?
美穂「それって、瑞希にぃとお父さんが赤の他人?ってことなのかな?」
和樹「いや、確証はない。」
美穂「瑞希にぃとお父さんが赤の他人なら私たちとお父さんが赤の他人ってことだって有り得るよね・・・。」
健「そんなことあるわけないだろ。まずは瑞希を探す。美穂はゆりを連れてうちに帰ってくれ。」
美穂「わかった。その後、私も探しに行く!」
健「いや、ダメだ。もう暗いからお前たちは家にいてくれ。できれば、親父に事情を聞いといてもらえるか?」
美穂「うん。わかった。健にぃこそ、気をつけてね。」
健「任せろ、自民党は俺に任せろ!」
美穂「じゃあまた後で!」
各々別の方向に向かう
場面がかわる
場面は海
瑞希がぽつんと一人海を眺めている
瑞希「海は広い~な、大き~な~。」
瑞希は完全に放心状態
瑞希「ドラマではこんなとき、死んだはずの彰が出てきて、『ねぇ、事件を解決してよ!』とかなんとか言ってヒントをくれるんだよな~」
突然、立ち上がる瑞希
叫びだす瑞希
瑞希「おい!彰、出てこいよ!」
当然、何もない
瑞希「まぁ、出てくるわけないよな。」
少し悲しそうな瑞希
もう一度叫ぶ
瑞希「おい!ばか修二!こら!」
彰「彰だよ。」
腰を抜かす瑞希
瑞希の目の前には彰がいた
瑞希「修二!修二~!」
泣きだす瑞希
彰「彰だよ。それに、そんなキャラじゃないんだから、泣くなよ。」
瑞希「え?これって夢?それとも俺をターゲットにした大々的なドッキリ?」
彰「どっちとも違う。よくある話だと、僕がヒントを君にあげるんだろうけど残念ながら今回は違うみたいなんだ。」
瑞希「ほんとに修二なのか?おい。」
彰「彰だよ。やっと、修二って言ってくれたね。あの時から、君は僕を『修二』と言わなくなった。」
瑞希「そうなのか。無意識で呼んでたから全然わかんねーや。」
彰「君は僕に罪悪感を感じてたんだよね?まぁ、今も。」
瑞希「ちげぇよ。んなわけねーだろ。」
彰「僕が目が見えなくなって病院のベッドで寝てた時、君は僕の見舞いに来てくれた。君が帰った後、僕は・・・」
ぷるるるるる
彰がポケットから携帯電話を取り出し、それに出る
彰「はい、彰です。・・・はい。・・・はい。わかりました。あと10分ですね。わかりました。はい。失礼します。」
彰の電話が終わる
瑞希「おい、修二。お前、生き返ったのに電話なんて持ってんのかよ。」
彰「本当は僕は生き返ったわけじゃないんだ。実は僕が死んで、天国か地獄に行く前に『審判の門』でえん魔様に天国って決定してもらって、天国に行く前に特別に面会時間をもらうことができたんだ。」
瑞希「なんだそれ?お前頭ラリったか?」
彰「信じないと思ったよ。とりあえず話最後まで聞いてよ。それで、さっきの電話はえん魔からもらったもので、さっきの着信はえん魔様からの連絡。『あと1分』だって。」
瑞希「ほぉ(笑)なんかムショみたいだな、ムショ(笑)でもよ、なんで面会時間もらえたんだ?」
彰「よくわかんないんだけど、僕が死ぬ前にいいことをたくさんしたから、えん魔様が『特別に1分23秒くれる』って言ってくれたんだよね。」
瑞希「お前、それ漫画の見過ぎじゃねぇか?で、えん魔はなんで1分23秒って中途半端な時間にしたんだよ?」
彰「『てきとーに1分23秒』って言ってたよ。」
瑞希「えん魔ってそんなてきとーなやつなのか?」
ぷるるるるる
彰が電話に出る
彰「・・・はい。・・・はい。わかりました。伝えておきます。はい。」
電話が終わる
彰「えん魔様から伝言で、『様をつけないとお前を地獄におくってやる』だって。」
瑞希「なんだ、そのブラックジョーク(笑)すげ~な、えん魔・・・・・・・・・様。」
彰「意外とそういうところ、真面目だよね。」
瑞希「うるせぇ!でよ、あの日の話してくれよ。俺が帰った後、何があった?ほんとにお前は自殺したのか?」
彰が答えようとすると彰の姿は足元から徐々に消えていった
瑞希「おい!おい!修二!」
消える直前に彰の声が響いた
彰「僕を助けてくれてありがとう。」
ナレーター1「そして、瑞希の目の前から彰の姿は全て消えた。彰が瑞希に説明したことに少しばかり不足があった。えん魔様が面会時間をくれたことに理由があった。それは、彰がえん魔様に頼み込んだからであった、「最後に恩人と話したい」と。
1分23秒はてきとーだったらしいが・・・(笑)」
ナレーター2「瑞希は彰が消えてしまって何とも言えないほどの寂しさに満たされたが、何かを彰から得たようだった。明ら(彰)かに明るくなっていた。うまいこと言った、今!」
彰と入れ替わるように健が現れた
健「やっぱりここか。瑞希は小さい頃から親父に怒られたときにはここに来たもんな。」
健の隣に立ち海を眺めながら話す
瑞希「うわ、びっくりした。グリズリーかと思ったよ。なんだ兄貴か、ちげーよ。今回は怒られたんじゃねーんだ。俺が自分の意思で家を出てきたんだよ。」
健「うるさい!今回はいつものけんかとは違うみたいだな。」
瑞希「なんで知ってんだよ?」
健「理由なんてどうでもいいだろ。」
瑞希「じゃあ、兄貴は知ってんのかよ?」
健「何をだ。」
瑞希「俺と兄貴は親父の子じゃねーんだよ。」
沈黙が流れる
健「らしいな。俺だって最初聞いたときは焦ったよ。」
瑞希「いつ聞いたんだよ?」
健「先月の俺の誕生日の夜だよ。」
瑞希「俺は今日の夜さ。ったく、最悪な日だぜ。」
健「誕生日おめでとう。」
瑞希「そーゆーことか。だから今日なのか。」
健「親父の気持ちも考えてみたらどうだ?」
瑞希「なんだよ、兄貴は親父の味方かよ?」
健「味方もなんもないだろ。」
瑞希「くそ親父とくそ兄貴が。」
健「それならお前は他人の子を15年育てられるのか?」
瑞希「そんなもん関係ねぇーよ。俺は子育てする予定ねーし。」
健「そういう話をしてるんじゃない!」
瑞希「兄貴まで説教かよ。兄貴は『焦った』って言ってたけどよ、ショックじゃなかったのかよ?」
健「ショックはショックだったさ。今まで育ててきてもらった父親と血が繋がってなかった、って聞かされたら誰だってショックだろ。でもな、他人の子を15年育てることは俺にはできない。だから、ショックよりも感謝の方が上回った。親父は俺たち2人と春和たち3人を分け隔てなく育ててくれた。大事なのは血じゃない。時間なんだよ。」
瑞希「俺にはそんな風に思えないね~。大事なのは血だよ、血。時間なんてどうでもいいんだよ。兄貴は頭がいいからそんな風に考えれんだよ、俺には無理だよ。だってさ、俺バカだもん。バ・カ・な・の、オ・レ・は。」
健はため息をつく
また沈黙が続いてから少しして健が話し始める
健「でも、あれだな。お前、想像してたよりも元気みたいでよかった。」
瑞希「なんだよ、兄貴。急に気色わりーよ。俺がそんな凹むわけねーだろ?天下の瑞希様だぜ?」
健「わかった、わかった。凹んでるからこそ、お前は今ここにいるんじゃないのか?」
作品名:誕生日って幸せな日? 作家名:しょう