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ごかくはしかく

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「はい、おしまい」
「「「えぇーーー」」」
教室のあちらこちらから ため息や声が聞こえた。
先生は、口元をにんまりさせてはなした。
「なにか 思った?」
ぽっかり口でも開けてそうな表情の児童に話を続けた。
「先生は、ずっと不思議です。みなさんに教えて欲しいの」
「「「えぇー  先生がぁー  なになに?」」」
「あのね。『いち』は一本で『に』は二本。『さん』は三本で…」
「『よん』は四本で『ご』は上と下の線の間に×書くんです」とこくごの好きな女の子が思わず発言した。
「よく知ってるわねぇ。そうなの、漢字の成り立ちではそういわれているのよ」
その女の子は みんなが拍手したので すこし照れくさそうに肩をすぼめた。
「でね。四本だった線が漢字になったら あら不思議! 五画になっちゃった」
ほんとだぁと児童の目は丸く黒板に注目した。
「それなのに『ご』は四画になっちゃうの。不思議でしょう?『ろく』から『じゅう』はほとんど象形文字。わかるかな?形を見て作られた文字ね」
ふぅーんと首を張子の虎のようにゆらゆらとうなずく児童たちに背を向け、先生は黒板にもとになるような画を書いた。
「六は家ね。七は切るって字にも入ってるわね。八は分ける。あ、だから分は上を開けてね。九は屈曲…折曲がってもう折れないようって尽きるの。数も尽きてしまったのね」
ずっと生徒は 首を張子の虎のようにゆらゆらとうなずいていた。
「九を『ここのつ』ていうのは 数が尽きるってことかしらね」
「せんせい、じゅうは?」
手を上げながら問いかけてきたのは クラスの飼育係りでさんすうの好きな男の子だった。
「これはね 針…縫い物する針からなの。なぜだろうね」
「形も刀みたいなのにじゅうっておっかしいのぉ」
「剣を持ってる金持ちだから ヒーローで とう!じゃないのかぁ」
クラスで元気な人気者の男の子が言うと 児童たちがどっと笑いだした。

作品名:ごかくはしかく 作家名:甜茶