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ひなた眞白
ひなた眞白
novelistID. 49014
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光の雨 神末家綺談最終章

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この手を離して



婚礼の夜も、こんなふうだった。穂積は石段の途中で足をとめ、月夜に照らされる山々を見渡す。

木々の開けた頂上付近。ぽっかりと浮かぶ、満月。
満開の山桜が散り。
蛍が飛び交い。
そして、雪が降っている。

季節が交じり合い、それは同時に境界を曖昧にしているのだった。

お役目を継ぐその夜も、穂積は一人、この山に佇んでいた。四季の入り混じる美しい光景。しかしそれは、この世のどこを探しても存在しない世界。ここは常世といえる。みずはめの眠る、彼女の意識世界へと続く道。それがこの石段なのだった。

「美しいな・・・」

山桜が、生ぬるい風に吹かれて、雪とともに舞い降りてくる。満月の光に照らされたその美しい光景に、時を忘れて魅入る。穂積の着物の袂を、風雪が柔らかく揺らした。

この光景を作り出している少女の魂に呼ばれ、穂積はここにやって来ていた。
今こそ役目を果たす時なのだ。悠久の彼方から待ち焦がれていたみずはめの願いが、そして瑞の願いが叶う夜。


「来たか」


気配に振り返ると、石段の下から瑞が現れた。柔らかな髪が揺れ、そこからのぞく見慣れた瞳は、これまで見たどんなときよりも静かな色をたたえていた。