「蓮牙」1 蓮牙
夜時間に入ってドーム全体の灯りが落とされると、地上の街には昼以上の明るさでネオンが灯された。色とりどりの光が眩しく輝く。
昼間の静けさが嘘のように人が溢れかえり、喧しい音楽やわけの分からない様々の音が響く。ときには銃声や爆発音やサイレンの音がそれに混ざる。
蓮牙は気持ちが高ぶるのを感じた。
カセルの樹海にはない危険がここには溢れている。それでいい――彼には危険の中に身を置いてやらなければならないことがあった。
ベルトにぶら下げた刀の柄を無意識に肘で押さえる。
ゆらゆら揺らすと、時折鞘の先が手すりに当たってチッチッと音を立てた。
二人組はなかなか出てこなかった。
昼間、彼らの後をつけている間に、聞こえてきた話を総合すると、二人はどうも賞金稼ぎで、今夜、三○○万の仕事をする予定らしかった。
「賞金稼ぎ」――懸賞金を目当てに賞金首を追い掛けるはぐれ者たち。蓮牙はそれがちゃんとした職業としてあるとは、今日初めて知った。
二人組が立ち寄った、「ゲート」近くの軍の連絡所で、
「こいつら殺してもいいのか?」
懸賞犯罪者の手配書を指差して蓮牙は係の男に訊いてみた。
「お前、許可証は持っているのか?」
係の男は面倒臭そうに自分の仕事から顔を上げた。
「許可証?」
「そうだ。そいつは許可証のない奴は殺せないぞ。ほら、そこに『生存』と書いてあるだろう」
蓮牙が怪訝そうな顔をしていると、男は親切に教えてくれた。
「犯罪者といえども許可なく殺しちまえば、今度はお前が犯罪者として手配されるぞ。前科がないなら『公認』資格を取るんだな。ここはシオニードだ、公安警察の許可が必要だからな」
蓮牙は男の言葉を思い出していた。
――公認資格か。許可さえありゃあ、殺していいってことか。
悪ぃこたぁやりたかねぇしな。
結局、蓮牙は二人組の後を付けて彼らの仕事っぷりを見てやることにしたのだった。
★ ★
待つのにも飽きて、思い切って店の中へ入って行こうかと非常階段に向かいかけたとき、足元から銃声がして、派手なガラスの割れる音とともに誰かが店から転がり出てきた。
銃声が続き、通りの向かいで商店の窓が割れる。