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アンドハッピーエンド
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novelistID. 321
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わすれんぼうくんのお話

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寛厚先生は年中組のみんなを集めた。僕はみんなに向けて挨拶の言葉を言うことになり、緊張しながらみんなの前で話し始めた。僕が余裕なく話している間に、それを聞いている集団の一部で、早くも僕を暗殺する計画が立てられようとしていた。
 「オイ、新しいヤツが入ってきやがったぜ。おまえはどう思う?」
 「あのまゆげと髪型が気に入らねえ。俺達の仲間には必要ねえ」
 「同感だ。今日中にやっちまうか?」
 「いや待て。俺のクツが完成するまであと数日かかる。それからにしようぜ。」
 「そうか、まあいい。せっかくだ。アイツも束の間のひとときを楽しんでいくがいい。」
このヒソヒソ話に、この時僕は全く気付いていなかった。そして楽しいはずの保育園にそんな話をするようなヤツがいるとも思っていなかった。
 僕の自己紹介が終わると、次は年中組全員の自己紹介が始まった。
「僕はわかたべしらふ。持ち物が多くて困ったら、いつでも言ってね」
名簿番号二番の若田部 素布(わかたべ しらふ)君は、腕が六本あるという、変わった体のつくりをしている。一度にたくさんの物を持つことができて、便利そうだと僕は思った。

 「俺の名前は、ない。ウソだよ」
人比斗 嘘(ひとひと うそ)君は名簿番号三番。寝ぐせがあって、ひどい髪型だ。何を考えているのかよくわからない独特な顔をしている。嘘なんて名前を子どもに付けるなんて、親はいったい何を考えているのだろう、というところまで、もちろん四歳の僕は頭がまわらなかった。

 「あははは。あはは。あははは」
名簿番号四番の馬鹿墓 場蒲嘉(ばかばか ばかばか)君は、読んで字のごとくバカのようだった。服を穿き、ズボンを着ていた。しかも何を考えているのか、まぶたに黒目とまつげをマジックで描いてあって、目をつぶっても目を開けているような感じだった。そして、常に鼻水を垂らしていた。

「やあ、ふっそきっくばかまんさ!」
名簿番号五番のばかまん君は、白髪で、表情がよく読み取れない、変な顔だ。口癖は僕にも言った、「やあ、ふっそきっくばかまんさ!」という自己紹介。僕は「ふっそきっく」の意味がよくわからなかった。この人も、もしかしたらバカなのかもしれない。

「わすれんぼうくん、よろしくね」