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華鏡(はなかがみ)~鎌倉のおんなたち・時代ロマン小説連作集~

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 だから、怖い。心の準備が何もできていないのだ。楓は気丈に微笑んではいたが、震えていた。まだ桜花の季節で、深夜の夜気は冷たいこともあった。
「俺が怖い?」
 覗き込まれ、優しく問われると、楓は返答に窮した。時繁が優しい手つきで楓の枕辺にひろがった黒髪を撫でた。
「俺って堪え性がないかな。本当は何日かは待つつもりだったけど、楓を見ていたら、どうにも我慢がきかなくなっちまった」
 好きな男にそこまで求められると思えば、女としては嬉しい。でも、やはり、これから脚を踏み入れようとする未知の領域は怖いものでしかなかった。
「本当に大丈夫か?」
「はい」
 楓が頷くや、唇が塞がれた。烈しく舌を絡める濃厚な口づけだ。熱い唇は楓の身体中を辿る。不安に脈打つ首筋から鎖骨、胸の谷間、臍のくぼみからすんなりとした腰と太腿。更に悪戯好きな唇はこんもりとした豊かな膨らみの先端を掠める。
「ここが良いの?」
 乳首に口づけられる度、楓が身体を仰け反らせるのが時繁には伝わっているらしい。今度は重点的にそこばかりを責められた。
 豊かな膨らみを形が変わるほど揉まれ、先端を膨らみに押し込まれる。じんじんとした痺れとも快感ともつかぬ感覚に感じやすい突起が支配された頃、その部分が今度はすっぽりと口に含まれた。
「ぁあっ」
 無意識の中に洩れ出た艶めかしい声が自分のものとは信じられず、楓は頬に朱を散らして両手で口を覆った。
「大丈夫だから、ちゃんと感じている証拠だから、恥ずかしがらないで」
 優しく手をどかされ、後はもう彼の思うがまま乳首を吸われ舐められ、敏感になって勃ち上がった朱鷺色の胸の飾りを舌で弾かれる度に、楓はすすり泣きのような声を洩らした。
 時繁は楓の乳房に時間をかけて丹念な愛撫を施した後、彼女の太腿に手を掛けた。
「下も可愛がってあげるから、開いてごらん」
 楓は真っ赤になり、首を振る。今夜はこれで限度だった、これ以上、恥ずかしいことはしたくないし、できそうにない。小さな声で訴えても、時繁は止まらなかった。
「駄目だ」
 きっぱりと言われ、そのまま強引に両脚を大きく開かされた。
「これだけ濡れていれば、大丈夫か」
 意味不明の科白を彼が呟き、生暖かい感触がいきなり閉ざされた蜜壺に侵入した。
「―?」 
 何が自分の身に起こったのかも理解できず、身体を起こそうとして楓は固まった。あまりの衝撃で涙が溢れた。時繁の頭が自分の股間に埋まっていたのだ。
「時繁さま、何を―」
 怯えて身を退こうとしても、時繁に再び乱暴に押し倒されてしまった。
 先刻見たばかりの光景がちらついて、羞恥のあまり気を失いそうだ。
「じっとしていて。怖がることはない。俺を受け容れた時、少しでも楓が痛くないようにするんだ」
 幼子に言い聞かせるように優しく囁かれ、楓は抵抗を止めた。
―そう、私は時繁さまを信じて、ここまで来たのだから、今更、ここで躊躇う必要はない。
 その間にも、時繁は楓の不安を宥めるように、優しい手つきで太腿から脹ら脛を幾度も撫でた。
「この綺麗な脚に俺はひとめ惚れしたのかもしれないな」
「脚にひとめ惚れ?」
 その言い様がおかしくて、楓はクスクスと笑った。時繁が鹿爪らしい顔で頷く。
「そう、楓が小袖の裾をめくって綺麗な脚を惜しげもなくさらしているあの姿を見た時、俺は一瞬で恋に落ちたんだ」
「脚にひとめ惚れされただなんて、歓んで良いのか悪いのか判らないわ」
「もちろん、歓ぶべきさ」
 ふいに蜜壺につぷりと異物が差し入れられ、楓の華奢な身体が陸(おか)に打ち上げられた魚のように撥ねた。
「あ―んっ」
 またしても予想外の声が洩れだし、楓は紅くなった。
「何をしたの?」
 不安を宿した瞳で問いかけると、時繁が笑った。
「指を挿れたんだ」
「指? そんなものを挿れたの?」
「指よりもっと大きなものを挿れるんだよ」
 判るようで判らないことを言われ、楓はますます不安になり眼を潤ませた。 
 時繁が笑いを含んだ声で言う。
「それよりも、初めて逢ったときより痩せたんじゃないか?」
「そうかしら」
 時繁を恋慕するあまり、恋煩いで食事も満足に取れなかったなんて、当人を前に言えるものではない。
「病か何かにかかっていたのか?」
 彼があまりにも不安そうだったので、つい楓は口を滑らせてしまった。
「乳母が教えてくれたわ。こういうのは恋の病というんですって」
「恋の病―だって?」
 しまったと思ったときには遅かった。その言葉は彼をたいそう歓ばせたらしく、時繁は実際、初めて見るような嬉しそうな表情だ。
「一ヶ月前に見たときは、もっと肉が付いてて胸も大きいように見えたけど」
 途端に、楓は口を尖らせた。
「失礼ね。それでは、私の胸が小さいみたい」
「小さくはないよ。それに、女人の胸は夜毎、こうすれば育って豊かになると聞いたことがある」
 生温かな舌で乳暈の回りをゆっくりとなぞられ、下半身に言いしれぬ痺れがひろがる。楓はまた腰を浮かした。
「時繁さま、髭が伸びているのでしょ? 何だかちくちくするわ」
 今や執拗な愛撫で紅く熟した果実のような色合いを見せる乳首に時繁の少し伸びた髭が当たる。くすぐったいのと感じするのと両方で、楓は堪らず笑いながら身をよじる。
「そろそろ行くぞ」
 楓の気が逸れた隙を見計らい、時繁が大きく割り裂いた両脚の間に陣取った。そのまますんなりとした両脚を肩に担ぎ、ひと息に押し入ってくる。
「あ? ああーっ」
 突然、激痛が蜜壺から下半身を貫き、楓の眼に涙が溢れ出した。
「痛い、痛」
 楓があまりに泣いて痛がるため、時繁は不安そうに訊ねてきた。
「そんなに痛いかい?」
 楓はしゃくり上げながら頷いた。
 それから時繁は最初のようにひと突きで入ってこず、慎重に楓の表情を確かめながら少しずつ挿入ってきた。楓が少しでも痛がったり身を捩れば、覗き込んで気遣う言葉をかけてくれた。
 しかし、時繁の言い聞かせたように、快感はいつまで経っても訪れず、痛みだけが長引いた。痛みのあまり溢れる涙を堪えて健気に耐え続けている楓の様子は彼にはちゃんと判っていたらしい。
 かなりの後、時繁が楓の頭を撫でた。
「今夜はこれで止めよう。俺が幾ら気持ち良くても、お前が痛いばかりでは辛いだろう?」
 労りの言葉をかけてくれる彼は本当は最初のようにひと息で挿入したいのに、我慢してゆっくりとしか動いていない。
 楓はできるだけ自分の笑顔が不自然に見えないように祈りながら微笑んだ。
「大丈夫です、何ともないから。ちゃんと最後までして下さい。時繁さまのお嫁さんにして」
「楓、お前―」
 時繁が息を呑んだ。楓は一糸纏わぬ姿で白い身体を彼にさらしている。豊かな丈なす黒髪は扇のように夜具の上にひろがっている。その姿は何とも扇情的で男心をそそろってやまない。時繁は傍に散らばっていた小袖を拾い、楓の裸身を覆った。
「お前の身体は今夜はこれ以上は目の毒になりそうだ」
 だが、今度は楓が自らその小袖を取り去った。
「時繁さま、お願い」
 懇願する眼許がまた露の滴を宿してきらめいている。
 時繁はそれでも躊躇った。