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きんぎょ日和
きんぎょ日和
novelistID. 53646
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辞書。始まりのための始まり。

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『出入口見つかったか~…。同じような人がいたか~…。』
と言った。
驚いているお母さんに、
『ちょっと待って!もう一回調べてくる。…見間違いかもしれん…。』
そう言って、仏壇の部屋へとダッシュした。

同じように半眼の中を覗き込んだら、さっきのやつがまだ覗き込んでいた。
私と目が合って、
『ギャーッ!!』
と退いて、退きながら隣にいた似たような汚らしい人に覗いてみろというように指差していた。
そしてその隣のやつが向かって右側から覗き込んできて、私と目が合うと、
『ギャーッ!!』
と退いた。
私はたじろぐことなくそのまま中を見続けた。
その二人が下がったことで後ろがよく見えた。
後ろの方に定かではないけど、ざっと十人ほど同じような姿の人が見えた。
みんな汚かった。

キッチンへと行き、お母さんに説明をした。
『そんなにいたの~?!…どうしたもんかな~。』
と考え、続けて、
『あんたどうにか出来ない?!辞書使うとか、やっつけるとか、どっかに行かせるとか…。やってみて。』
と言いやがった。
『はぁ~?!出来るわけないよーっ!!やり方も分からないし…。』
と言うと、お母さんはちょっと考えて、
『…いや~分からんよー。まだやったわけでもないし。やる前から答えを出したらダメよっ。…はい、やってみなさい。』
とまた訳の分からないことを言いやがった。

寝る部屋へと戻った私は、あいつはまだいるのかとキョロキョロしてみた。
気配はするけどよく分からない。
まっ、そんなに探していたとしてもどうもこうもないし…。
など思い、腕組みして部屋の中をうろちょろしていた。

何の気なしに独り言のように暇なので、腕組みしたまま自分の曲でもと思い歌い始めた。
歌い始めて違和感を感じた。
少し大きめの声でまた同じ部分を歌ってみた。
やっぱり何かがおかしい…。
ゆっくり歌いながらキョロキョロしてみた。
あいつを見つけた!!
私の右の方にいた。
そいつに向かって、大きな声でもう一度歌ってみた。

歌い始めると男の子は、耳を両手でふさぎ、聞こえはしないけど口を縦に思いっ切り開いて、
『わーーーっ!!』
と体を後ろに反らし叫んでいた。

私は驚いて歌うのをやめた。
男の子は叫ぶのをやめた。
私は確かめたくて、最初の単語をゆっくり音に合わせて歌った。
その子は同じようにまた耳をふさぎ叫んだ。
歌をやめるとその子も治まって、また歌うと叫び苦しむ…というのを数回繰り返してみた。
やっぱり歌うと嫌がるようで…。
『お母さん、お母さん…。』
と部屋から流れ出るようにキッチンにいるお母さんのところへ大きな声で呼び求めながら向かった。

また今あったことを説明した。
『あんたも次から次に何か起こるなぁ~。すごいなぁ~。何をしたらそうなるの?!』
と言って、不思議そうだった。
そして本題に戻ったお母さんの顔がいぶかしげになって、黙って考えているようだった。お母さんは私の方を向いてはいるけど、目は合わず独り言を言い出した。
『歌ったら嫌がる…歌ったら嫌がる…。どういうことだろう…?!歌ったら…嫌がる…聞いたことないなぁ~。』
と呟いて、我に返ったお母さんに、
『歌い続けたらどうなるかちょっとやってみて!!そしてどうなったかまた教えて。はいっ、行っておいで~。』
と言われ、納得がいかないいまま私は部屋に戻った。

これは正しいのかな~?!と疑いながらも私は歌い続けてみることにした。
歌い始めてすぐにその子は嫌がりだした。
『♪~あんたの~♪』
と歌っては、その子をチラリ…。
うん、嫌がってる。
男の子を見たまま続けて、
『♪~よ~う~に~♪』
とゆっくり様子をうかがうように歌ってみた。
目が合ったまま両手で耳を塞ぎ嫌がっていた。
これはすごいと思った私は、お母さんの言った通り、歌い続けた。

男の子が嫌がってる中、お母さんが登場して、
『どうなった?!』
と軽く聞いてきた。

『そこでこんな風にして嫌がってる。』
私はその子のマネをした。そして歌い続けてみた。
お母さんが、
『どう?!嫌がってる?!』
と聞いてきたので、私は歌いながら肯いた。
お母さんは眉間にシワを寄せ、その辺を見ながら、
『はぁ~。』
と言った後、表情を変え、
『どう?!苦しい?!…苦しいでしょうね!!…今までまあ、よく出て来たもんよ。そのまま苦しみなさ~い。こっちも今まで何回も怖い思いをしてきたんですからね!!』
と冷たく言い放った。
そんなお母さんに私は驚いた。
歌いながらも顔が引きつった…。
その子の表情や気持ちを多少は感じていたので、どっちが恐ろしいんだか…とビビった…。

でも、退治をしないといけないと駆り立てられていたので、男の子は怖がるばかりで居続ける。
どうしたもんかと考えて、あっ、辞書だと思い、お母さんの部屋から辞書を持って来た。
腕に抱えていたら怖がらず、表紙を見せたら、
『わっ!!』
と驚き後ろに後ずさった。
でもそれだけだった。
すぐに立ち直り怖がらなかった。
あれ?!とお母さんの言ったことと違うと思っていたら、その子は立場が逆転したのかニヤッとして近づこうとした。
私はどうしたもんかと必死に取った策が、辞書を開きその子に向けることだった。
まあ~、辞書の威力は凄いもので、私が歌った時のように体を反り返し嫌がりだした。
私はそのままそーっとその子に近付きながら、尚且つ歌もプラスしてみた。
今までにない嫌がり方で、体を右、左とねじり、口が引き裂けそうなくらい叫んでいた。
私はそのまま歌った。

そしてお母さんへと報告に行った。

お母さんは相も変わらず、単調に、
『はい、そのまま続けて、続けて~。』
で終わりだった。

部屋に戻ったら男の子はいなくなっていた。
なんでだろう…と首を傾げ考えた。
その瞬間、何だこの気配はと感じた。
まだあいつは近くにいる。何処だ何処だと第六感的な所を使って調べた。

いたっ!!と思った所は、私の後ろだった。
小さくなって縮こまっていた。

どんなに急いで振り向いても向かい合えない。
どうしたもんかと何か方法はないかと考えた。

部屋の中を見回し、見つけたのが大きな鏡だった。
高さは2メートルくらいありそうな大きな鏡だった。
これに辞書を映して歌ったらどうなるかとやってみた。

先ずは、辞書を開いて鏡に映した。
何にも変わらない。
私が鏡と向き合ってるままじゃ意味ないし…、と気付き後ろを向いて、どうしたら開いた辞書を映せるだろうかと…。
体が硬い私は器用なことは出来ないので、開いた辞書を頭の上に乗せて先ずは様子をと思う前に、男の子は嫌がり始めた。
これは行けると私は歌った。
見事ドンピシャリだった。

人が見たら、
『何やってんだ?!』
という格好だけど、私はクソ真面目にやっていた。
お母さんを助けなきゃっ!!自分にしか出来ない!!という思いだけのために、男の子には申し訳なかった。

『居なくなれ~、居なくなれ~。』
という思いで必死だった。

すぐにはいなくなるわけでもなく、影が小さくなったくらいだった。


そんなこんなして、次の日くらいに廊下の壁の歪みが消えていた。