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私の読む 「宇津保物語」  初秋

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      君が来ぬ夜は我ぞ数かく
(明け方になると鴫が何度も繰り返して羽ばたきをするように、あなたがおいでにならない夜は私は眠られずに何度も寝返りして身もだえしている)(七六一)
 頭に浮かべて詠われる。

 兵部卿の宮は、受け取って、

 大鳥のはねやかたはになりぬらん
       いまは乙箭に霜の降るらん
(大鳥の羽は独り寝の寂しさと降る霜のために片羽になったようだ。今度は乙箭に霜が降って片羽になるだろう)

 覚えのないことですな」

 彈上の宮に兵部卿の宮は差し上げる。彈上の宮

 夜をさむみはねもかくさぬ大鳥の
        ふりにし霜のきえずもあるかな
(夜が寒いのに、羽も隠さない大鳥(風聞)の羽に降った霜がまだ消えないのですね)

 なお、初め評判されたのが良くなかったのです。

 と、左大将正頼に差し上げる。正頼は、

 きえはてで夏をもすぐす霜みれば
        かへりて冬の数ぞ知らるゝ
(消えてしまわないで夏をさえ過ごす霜を見ますと、
そのために冬の霜は甚だしかったろうと思います)