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【創作】「rain」【BL】

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レインは、自宅のプリンターが吐き出す紙束を眺めながら、一体自分は何をしているのだろうと考える。

こんなことしても、迷惑がられるだけじゃないか・・・・・・。

半日かけてルーク少佐相手に講義を行った結果、彼の得意不得意を把握したレインは、自宅で得意分野の詳しいアプローチと、不得意分野の基礎的な解説をまとめ上げ、印刷を開始したところで我に返った。

どうせ、明日は来ないだろうし。

印刷を中止し、吐き出された紙を纏めて封筒に入れる。研究所の資源回収箱に持って行こうと、床に放り投げた。
明かりを消して、寝室へと向かう。手探りでオーディオのスイッチを入れ、流れてきた雨音に耳を澄ましながら、ベッドに横たわった。
最初は、ただ作業に集中する為に流し始めた雨音が、今では彼の生活に欠かせないものとなっている。自分の全てが雨粒となって降り注ぐ様を夢想しながら、レインはクローゼットに押し込んだ鞄の中身に意識を向けた。

早くバックアップを完成させないと・・・・・・。

ノートパソコンの隠し場所としては心許ないが、少佐の部下が家捜しすることもないだろう。長い時間をかけて、慎重に行ってきたデータ化だ。今更、水泡に帰すなど耐えられない。

どうか、邪魔をしないでくれ・・・・・・。

サーサーと流れるノイズに耳を傾けながら、レインは微睡みの中に沈んでいった。


実家の食卓に、長兄と次兄が座っている。兄弟が勢ぞろいすることなど、何年ぶりだろうか。
次兄が、笑いながら長兄を指差し、

『レイン、たまにはガールフレンドの一人や二人、連れてきたらどうだ。このままじゃ、兄さんみたいになっちまうぞ』

しかめっ面の長兄は眼鏡を押し上げ、じろりと次兄を睨んだ。

『お前のようにならないだけマシだ』
『はいはい、すいませんでしたー』

真面目で堅物の長兄と、放浪癖のある次兄。水と油のようにも見えるが、意外と仲は悪くない。

『二人とも、たまの家族団らんくらい、機嫌良く過ごせないの?』

姉の後ろから、甥が顔を出した。長兄に気がついて首を竦めると、こほんと咳払いして、

『あの、レイン博士。俺・・・・・・私のレポートを見ていただけませんか?』

かしこまった口調に笑いながら了承し、腰を上げかけた時、氷のような長兄の声が響いた。

『レイン、窓を閉めなさい』

途端に、周囲を雨のカーテンが閉ざす。倒れ伏した二人の男と、彼らから流れる赤い血を、水滴が洗い流していった。


レインは目を開けると、ぼんやりと周囲を見回す。暗い寝室に、オーディオから流れる雨音が響いていた。
ベッドの上で身動ぎし、胎児のように体を丸める。出来るなら、母の胎内に戻って、そのまま命を終えたいと願う・・・・・・。


作品名:【創作】「rain」【BL】 作家名:シャオ