【創作】「rain」【BL】
「お会いできて光栄です、エリスン博士」
目の前の相手から手を差し出され、レインはおどおどと握り返す。何故か所長に連れられて、例の「エリート軍人様」がやってきたのだ。
「こ、こちらこそ、光栄です・・・・・・ウィンフィールド少佐」
「ウィンドフォードです」
眉一つ動かさずに訂正され、レインはごにょごにょと謝罪を呟きながら、身を竦める。
所長から、少佐がAIの研究に興味を持っていること、レインから研究内容を説明して欲しいことを告げられた。一瞬、拒否しようかと口を開き掛けたが、思い直して曖昧に頷く。恐らく、所長も考えていることは同じなのだ。
『彼の機嫌を損ねたら、予算を削られるかもしれない』
軍関係の依頼を引き上げられたら、研究所の存続すら危うい。協力するに越したことはないのだ。
所長は、少佐をレインに押しつけた後、長居は無用とばかりに部屋を出ていく。気詰まりな沈黙の中、口を開いたのはウィンドフォード少佐のほうだった。
「エリスン博士は、家庭用ロボットのAIを開発したとお聞きしましたが」
「あー・・・・・・僕のことは、レインと呼んでください。エリスン博士は、僕の兄です」
相手は一瞬訝しげな顔をした後、了承の印に頷いて、
「では、私のことはルークと呼んでください」
「はい?」
「ウィンドフォード少佐は、私の父です」
からかわれているのかと思ったが、ロバートが「父親も軍人だ」と言っていたのを思い出す。自分から言い出した以上、拒否することも出来ず、レインは「・・・・・・はい」と頷いた。
「ええと、あの、何から説明しましょうか・・・・・・」
「貴方の研究について。ただ、私は門外漢なので、的外れな質問をしてしまうことかもしれません」
「あっ、それは、あの、はい、大丈夫、です・・・・・・」
にこりともしない少佐から、レインはおどおどと視線を逸らす。
この人は苦手だ・・・・・・。
厳格な雰囲気が、長兄を思い出させた。あの日見た、兄の険しい視線が脳裏に蘇る。それでも、レインはキャビネットからファイルを取り出して、基礎的な説明から始めることにした。
作品名:【創作】「rain」【BL】 作家名:シャオ