【創作】「rain」【BL】
ルーク・ウィンドフォード少佐は、手渡された資料から顔を上げる。クレイグ大佐は、日に焼けた顔に悪戯っぽい笑みを浮かべて、年若い相手の反応を見ていた。
「内容は理解出来たかね、少佐?」
「そうですね。半分くらいは」
手の中にあるのは、AI研究に関するレイン・エリスン博士の論文。ルークが辛うじて理解できた内容が正しければ、最先端の研究だ。
「それは素晴らしい。私は、これが未知の言語で書かれた古文書だと言われても、信じてしまうよ」
上官の軽口にも、ルークは表情を変えずに指示を待つ。クレイグ大佐は、椅子の背に身を預けると、今朝のニュースは見たかと聞いてきた。
「デモについて、延々流していただろう」
「警官隊と衝突したそうですね」
「危険分子が紛れ込み始めたようだ。そそのかされて、とうとう実力行使に出始めるらしい」
クレイグ大佐は、別のファイルを机の上に放り出す。
「コンピューター関連の研究所を爆破するそうだ。ま、これは未遂で押さえたがね。だが、これで終わりではないよ。そう、次はもっと巧妙にやるだろう」
「次の計画は、もう分かっているのですか?」
ルークの問いに、大佐は天井を仰いだ。
「目星はついている。彼らは、家庭用ロボットを目の敵にしているからな」
上官の言葉に、ルークは手の中の資料へと視線を落とした。レイン・エリスン。家庭用ロボット「rain」のAIを開発した天才学者。今は、軍の依頼で災害避難プログラムを研究しているはずだ。
「分かりました」
ルークはそう言って敬礼すると、静かに部屋を辞した。
作品名:【創作】「rain」【BL】 作家名:シャオ