【創作】「rain」【BL】
朝のニュースで繰り返し流されるデモの映像に、レインは寝ぼけた視線を向ける。
過剰な機械化に警鐘を鳴らし、自然回帰を叫ぶ人の群。レインは、彼らの衣服は草の蔓で編んだのだろうかとぼんやり考えながら、トースターにパンを押し込んだ。
『・・・・・・によりますと、彼らはこの後、マリナ通りを行進し・・・・・・』
現場に派遣されたレポーターの声を聞き流しながら、メモに買い物リストを書き殴る。何で今時手書きなんだと、自分で自分につっこみを入れてニヤニヤした。
『貸せ!』
『あっ! ちょっと!』
デモ隊の一人がレポーターのマイクを奪い、彼らの主張をがなり立てる。家庭用ロボットは人類を堕落させる悪魔の発明で、今すぐ廃棄しなければ、家族の絆は分断され、夫婦の間に修復しがたい亀裂が入り、子供達は心を持たない木偶人形になってしまうらしい。
コーヒーを入れていたレインは、あまりの言い草に苦笑を漏らした。
そうか、僕は悪魔だったのか。
今現在、急速に普及している家庭用ロボットのAIを開発したのは、レインだ。その功績から、かなりの好待遇で今の職場に引き抜かれたのだから、彼にとっては神の恩恵とも言えた。
ニュースキャスターが読み上げた原稿によれば、昨夜のデモでは、怪我人が多数出たらしい。日に日に過激さを増す行動に、レインは眉を顰める。
彼らは、医療機器での治療も拒否するのかな・・・・・・。
頑迷な迷える羊達。だが、災害が起きれば、彼らも避難救助の対象となる。拒否する相手をどう迅速に救助するか、研究中の災害避難プログラムに学習させなければと、レインは新たな課題を見つけて満足げに頷いた。
作品名:【創作】「rain」【BL】 作家名:シャオ