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【創作】「rain」【BL】

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病院の廊下を、ルークは驚異的な早さで駆け抜けていった。
目指す病室の扉から、丁度白衣の一団が出てくる。ルークは医者とおぼしき男性の腕を取ると、

「先生、彼は・・・・・・エリスン博士には、面会できますか?」

相手は一瞬眉を潜めたが、ルークの制服を見て納得したように頷き、改めて首を振った。

「非常に危険な状態です。面会は許可出来ません。第一、話せる状態ではありませんよ」

ルークは叫びそうになるのを堪え、「分かりました」と引き下がる。
一団が去った後、扉の外で待機していた部下が声を掛けてきた。

「少佐、博士は」
「分かっている。家族への連絡は?」
「此方へ向かっていると」
「分かった。君は、家族を迎えに行ってくれ。此処は私が引き受ける」
「え? ですが」
「いいからさっさと行け!」

ルークの突然の剣幕に、部下は慌てて敬礼すると、全力で駆けていく。部下の姿が完全に見えなくなってから、ルークは躊躇い無く病室の扉を開けた。



白く無機質な病室のベッドに、変わり果てた姿のレインが横たわっている。頭から顔の大半を包帯で覆われ、呼吸器をつけられていた。その痛々しい姿に、ルークは膝から崩れ落ちそうになるのを必死で堪えながら、ベッド脇に駆け寄る。

「レイン・・・・・・レイン・・・・・・!」

血の気のない手を握り、自分の頬に押し当てた。目の前の恋人の命が、風前の灯火であることを、経験から悟る。

すまない、私のせいで・・・・・・!

タリアが犯人だということは、早々に箝口令が敷かれていた。公式の発表は、テロリストによる犯行となるだろう。だが、そんなことはどうでも良かった。自分のせいで巻き込んでしまったこと、自分が側にいれば防げたとの思いが、ルークを押し潰す。

「・・・・・・私も直ぐに、君の元へ行く。愛してるよ、レイン」

囁いたその時、僅かにレインの指が動いた。ハッとして顔を上げると、薄く開かれた目が、ルークへと視線を向けている。

「レイン!?」

呼吸器の向こう側で、唇が震えた。ルークは躊躇い無く手を伸ばし、呼吸器を外した口元に耳を寄せる。
微かな、途切れ途切れの声。それが、レインの最後の言葉となった。

「・・・・・・・・・・・・」

ルークは、もはや無意味になった呼吸器を、そっと元の位置に戻す。レインの額にキスを落とし、握っていた手をベッドの上に横たえた。
目を閉じて、胸の前で十字を切る。感傷に浸っている時間はない。これが最後のチャンスなのだ。
ルークは、音もなく病室を抜け出すと、そのまま病院から姿を消した。


レインの自宅に戻ったルークは、寝室のクローゼットからノートパソコンを持ち出す。きちんと整えられたベッドに視線を投げるも、素早く家を出て車に乗り込んだ。
とにかく、時間がない。誰かに気づかれる前に。

作品名:【創作】「rain」【BL】 作家名:シャオ