【創作】「rain」【BL】
翌日、ルークの車で出勤するレイン。
さすがに事情が広まっているようで、皆遠巻きにこちらを見ている。人の輪にロバートを見つけ、レインは小さく手を振った。
もっとも、今は誰とも話したくないが。
研究室に入ると、まずルークが室内を点検する。レインはそわそわしながら、何度も扉の施錠を確認した。
「大丈夫、ちゃんと掛かってる」
「ひゃああ!」
後ろから抱きしめられ、レインは素っ頓狂な声を上げる。待って待ってと言いながら、慌ててルークの手を振り解いた。
「い、何時も通りに振る舞うって、言いましたよね!?」
「二人きりなのに?」
首を傾げて問うルークに、レインは視線を逸らし、
「だ、誰かが気づくかもしれない、し。そもそも、普段は鍵なんて掛けないから」
「今の状況で、開けっ放しのほうが驚かれるよ。いくら君でも、そこまで浮き世離れしてるとは思われてないさ」
そのまま抱き寄せられ、頬に口付けされる。レインは真っ赤になって、ルークの腕から逃げた。
「て、手を出すの早いですよ、ね。若いから?」
レインの言葉に、ルークは首を傾げて、「いや」と返し、
「むしろ遅いくらいだ。君と出会うのに、二十五年も掛けてしまった」
一瞬きょとんとしたレインだが、次の瞬間、首まで朱に染める。
「愛してる、レイン」
されるがままに抱き寄せられたレインは、このまま時が止まればいいと、ぼんやり考えた。
夜は、レインが強固に主張した結果、自宅へ戻る許可が下りる。家の周囲に警備員を配置し、ルークが自宅内でも警護する条件付きで、だが。
もしかしてと覚悟していたが、誰かが進入した形跡もなく、室内も荒らされていないので、レインはほっとした。
点検を終えたルークが戻ってきて、レインに声を掛ける。
「空き巣に入られているとでも?」
「え? ああ、まあ。うっかり戸締まりを忘れてるんじゃないかって、気が気じゃなかったですよ」
「それか、私の部下が家捜しをすると?」
その言葉に、レインはぎょっとして顔を上げた。ルークは真面目な顔で、こちらを見つめている。
「レイン、この際、隠し事は無しだ。私は、君が取り替えた鞄の中身に興味がある。関係ないなんて言わないでくれ。私は、君を守りたい。全力で」
レインは戸惑い、「貴方を巻き込みたくない」と、弱々しく呟いた。
「下手したら、懲戒免職になる、かも。それだけじゃなくて、あの、僕は」
「レイン」
気がついたら、ルークはすぐ目の前に立っている。伸ばされた手が、レインの頬に触れた。
「私は、君を守りたいんだ」
真剣な表情の相手に、嘘やごまかしは通用しないと悟る。
「・・・・・・寝室へ。クローゼットの中に、鞄を隠してある」
きびすを返して二階へ向かうルークの後を、レインはうなだれながらついて行った。
作品名:【創作】「rain」【BL】 作家名:シャオ