【創作】「rain」【BL】
「ひゃぁ!?」
「君を愛している、レイン」
「はぁ!? なっ、ちょっ!!」
振り払おうともがくも、相手はびくともしない。そのままベッドに押し倒され、間近で顔をのぞき込まれた。ルークの整った顔立ちに一瞬息を呑み、レインは顔を背ける。
「レイン、君の本心が聞きたい」
耳元で響く声に、レインは身を竦めた。
「あの時、何故笑わなかった?」
「えっ? あ、な、何のことか・・・・・・」
本気で戸惑っていると、ルークは、タリアのことを話した時だと言う。
「あの時、君は笑わなかった。いつも、何があっても、君は笑顔でいるのに。何故、あの時だけ笑わなかった」
「え? な、そんな、あの・・・・・・お、驚いただけですよ。貴方に恋人がいるなんて、意外だなって。それだけです。・・・・・・もう、こんな悪戯やめてください。全く、冗談が過ぎますよ」
レインはルークを押し戻そうとするが、逆に手を取られ、シーツに押しつけられた。
「それが、君の本心か?」
真顔で問いかけられ、レインは目を逸らす。
「決まってるじゃないですか・・・・・・何でそんな」
「だったら、何故笑わない?」
ルークの言葉に、レインは唇を引き結んだ。まるで笑い方を忘れたかのように。
「君が、いつものように笑ってくれたら、二度と持ち出さない。今夜のことは冗談だったとして、全部忘れてくれ。私も忘れる」
「・・・・・・それで、タリアさんと結婚するんですか?」
「君が笑うなら」
レインは目を閉じて、雨の日に倒れていた二人を思い出す。雨に打たれ、赤い筋が地面に流れていった・・・・・・。
「・・・・・・笑える訳がない。貴方を愛しています、ルーク」
震える声で吐き出すと、ルークの息を吐く音が聞こえる。頬に触れる手の暖かさと、低い囁き。
「愛してる、レイン」
そろそろと顔を向けると、唇を塞がれた。互いの体に腕を回し、きくつ抱き合う。今はただ、温もりだけを感じていたかった。
穏やかなレインの寝顔を眺めながら、ルークはタリアに別れを告げた時のことを思い返す。レインが駐車場で襲われる前、彼女と会い、話をしていたのだ。レインの本心がどうであれ、自分の心は既に決まっていたから。
別れを切り出した時のタリアは、相変わらず冷静で、ただ残念そうに、「仕方ないわ」と呟いただけ。
彼女なら、幾らでも新しい相手は現れるだろう。自分は彼女に相応しくなかった、それだけのことだ。
レインが深く息を吐いて、寝返りを打つ。ルークは相手の髪を指に絡めながら、「良い夢を」と囁いた。
作品名:【創作】「rain」【BL】 作家名:シャオ