【創作】「rain」【BL】
流れていく景色が茜色に染まる。街灯の光が流れる筋となる様を目で追いながら、レインはバックミラー越しにルークを見た。
駐車場で襲われた時、駆けつけた男性が警備員と話しているのを聞いたと、ルークに言うべきだろうか。彼は「ウィンドフォード少佐の部下」だと説明していた。タイミング良く現れたこと、ルークにすぐ連絡が行ったこと、自宅ではなくホテルへ送られていること。さすがにレインも、自分が狙われていることに気づく。何故秘密にしているのかまでは、分からないが。
デモ隊の狙いは何だろう。やはり研究内容だろうか。レインなら、アップデートにウィルスを紛れ込ませることも可能だ。そうやって一気に破壊したほうが、手間も掛からない。
ルークが自分の研究に興味があると言い出したのも、任務の上でだったのだろう。それならそれで構わない。むしろ、そのほうが良かった。
あくまで仕事上の関係であったほうが、気が楽だ・・・・・・。
任務を終えたら、ルークとの縁は切れるだろう。そのまま忘れてしまえばいい。いつものように。
ノートパソコンだけでも、回収できないかな。
パスワードを一度でも間違えたら、データを消去するようトラップを仕掛けてあった。デモ集団に悪用される恐れはないものの、やはり水泡に帰すのは惜しい。レインは、窓の外をぼんやり眺めながら、どう理由を付けて自宅に戻るか考えていた。
殺風景な一室に案内されて、レインはベッドに腰を下ろす。何処かのラジオ局で環境音を流してくれないかなと、室内を見回した。
ルークが、簡単な作りの棚に、部屋の鍵を置く。
「此処に置きますから、無くさないように」
「ありがとう。あなたの部屋番号をメモしておいてくれますか?」
じっと向けられた視線に、レインは照れ笑いを浮かべ、「忘れてしまうかもしれないから」と返した。だが、ルークはにこりともせず、
「この部屋に泊まります」
「はい?」
「いくら何でも、自分が狙われていることくらい、気づいているでしょう?」
それはそうだけど、と言葉を濁すレインに、ルークは床を示し、
「私は此処で十分ですから。ご心配なく」
「えっ、そんな、させられませんよ、そんなこと」
「なら、一緒に寝ますか?」
冗談だと分かっていても、レインの心臓は跳ね上がる。やめてくださいと呟いて、視線を逸らした。
沈黙が落ちる。気まずさを解消しようと、レインは努めて明るい声で、
「私に張り付いていたら、恋人に会いに行く時間も取れませんね」
ルークは少し首を傾げ、「恋人などいません」と答えた。
「また、そんなこと言って。タリアさんがいるじゃないですか。彼女に怒られてしまいますよ」
「何度か、食事をしただけです」
レインの茶化しにも反応せず、真顔で返答してくるルークに戸惑いながら、「でも、噂になっています」と続ける。
「皆、賭をしていますよ。あなたが何と言ってプロポーズするか」
「下らない噂です。噂は、噂でしかない」
その固い口調に、レインが困惑していたら、近づいてきたルークに抱きしめられた。
作品名:【創作】「rain」【BL】 作家名:シャオ