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【創作】「rain」【BL】

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雨の音が満ちる寝室で、レインは胎児のように体を丸めて横たわる。浅い眠りは、心の底に沈んだ澱をかき混ぜた。

『死ねよホモ野郎!』
『この町から出て行け!』

周囲を取り囲み、罵声を浴びせる人々。レインはうずくまって、耳を塞いだ。誰かの手が、髪をつかんで無理矢理顔を上げさせる。視線の先にいたのは次兄。口汚く罵りながら、憎々しげな視線を向けてきた。
人の輪の外側に、長兄と姉がいる。氷のような眼差しが、レインの心を抉った。

知られてしまったら、もう「向こう側」にはいけない。

不意に、罵声と喧噪が消える。代わりに、ルークが目の前に立っていた。声を掛けようとしたレインの眉間に、銃口が突きつけられる。

『レイン、窓を閉めなさい』

その瞬間、レインは飛び起きた。薄暗がりの中、額の汗を拭う。
今の今まで忘れていた。窓を閉めた後、外から響いたのは二発の銃声。長兄は、車のエンジン音だろうと言っていたし、そう思い込んでいた。
彼らがどうなったのか、誰も教えてくれない。
レインはじっとりと汗をかきながら、目を見開いていた。



「おはようございます、レイン。約束は覚えていますか?」

ルークの言葉に、いかにも起きたばかりといった様子のレインは、ぼんやりと視線を彷徨わせる。乱れた髪を掻いて、寝間着の裾を引っ張り、欠伸をかみ殺したところで思い出したのか、「うわあ!」と声を上げた。

「す、すみません! 寝坊してしまって!!」
「いえ、こちらが無理を言ったのですから」
「す、すぐ支度します! あの! 中でどうぞ!」

大慌ての様子に、ルークは笑いを堪えながら、家の中へと足を踏み入れる。
狭いが、小綺麗な家だ。もっと乱雑な暮らしを想像していたが、研究の傍ら、家事もこなしているらしい。

「ごめんなさい、シャワーを浴びてきます。あ、良かったら、冷蔵庫の中に飲み物がありますので」
「どうぞお気遣いなく」

棚の雑誌は発行順に揃えられ、ソファーのクッションは綺麗なグラデーションを見せている。そう言えば、研究室のキャビネットや机も、きちんと整頓されていた。意外と神経質なのかもしれない。

これなら、侵入者があればすぐ気がつくだろうな。

レインがあたふたとバスルームに駆け込み、少しして水音が響くのを確認してから、ルークは迷いなく二階へ向かった。

作品名:【創作】「rain」【BL】 作家名:シャオ