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【創作】「rain」【BL】

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ルークにとって、週末を迎えるのは頭の痛い問題だった。平日は自宅と研究所の往復なので、護衛するのも楽だが、休日となるとそうも言ってられない。レイン博士に家から出るなとも言えず、ルークはさりげなく博士の予定を確認する。

「食料の買い出しに行かないと。週末にまとめ買いしてるんです」

人の気も知らないで、博士は呑気に言った。週末のスーパーマーケットは、さぞかしごった返しているだろう。しかも、またデモ行進が予定されている。この機に乗じて、博士に接触を試みられないとも限らなかった。

「後は、映画でも行こうかなと」
「・・・・・・何か、興味を引くものが上映していますか?」

暗い館内は、相手方にとって絶好の場所だ。人々はスクリーンに集中している。隣に誰が座ったか、確認する者もいないだろう。

「いえ、特には無いんですけどね」

だったら控えてくれないかと、出かかった言葉を飲み込む。この善良で、呑気な、専門分野以外に全く関心のない人物は、自分がどれだけの危険に晒されているか、分かっていないのだ。

「あ、でも、土曜は出てくるかもしれません」

レイン博士がのんびり付け加え、ルークは相手の顔をまじまじと見つめる。

「こちらに?」
「はい。学会に出席している同僚が、帰ってくるんです。その資料を見せてもらいたくて。まあ、週明けで」
「もし良ければ、私もその方にお会いしたいのですが」

途中で遮られた博士は、訝しげな顔でルークを見返した。

「はあ、では、月曜に」
「いえ、土曜日の方が」

ルークの主張をどう受け止めたかは知らないが、博士は「分かりました」と頷く。

「では、土曜に。こちらで待ち合わせしますか?」
「家までお迎えに行きます」
「ふぁ!? えっ、そんな手間をかけさせる訳には」
「お気になさらず」

出来るだけ早く、博士の身柄を確保したかった。相手は「悪いですよ」と繰り返すが、結局ルークが押し切る。
これで土曜日は乗り切れるが、問題は日曜だ。さすがに、週末を全部潰させる口実は思いつかない。ルークは思い切って、制服の内側に手を入れた。

「博士、これを」
「はい。・・・・・・はい?」

黒光りする銃身に、レイン博士が息を飲む。護身用に持っていて欲しいというルークからの提案は、派手な身振りとともに拒否された。

「あ、扱えませんよ、こんなの!」
「射撃の経験は?」
「ないない! ないです! 止めてください!」

いささか過剰とも思える拒絶だが、暴力とは無縁に生きてきたであろう相手には、刺激が強すぎたか。ルークは銃をしまうと、代わりに防犯ブザーを取り出す。

「では、こちらを。銃よりは扱い易いでしょう?」
「まあ、そうですが・・・・・・。これは必要なんですか?」
「研究所の外では、護衛もつきませんから」

表向きは、と心の中で付け加えた。ルークは、レイン博士を騙していることに罪悪感を覚え始めていたから。
レイン博士はブザーについた紐を指に絡めながら、「子供みたいですね」と笑う。

「念の為、です。週末に、またデモが行われるようですから」
「はあ・・・・・・まあ、近づきませんよ。僕だと分かったら、何をされるか」

博士は肩を竦め、シャツのポケットにブザーを滑り込ませる。少し躊躇う様子を見せてから、口を開いた。

「心配してくれるのは、職務だからですか?」

今更な質問に、ルークは眉をひそめる。他にどんな理由を想像しているのだろうか?

「それもありますが、友人として心配しています」

この数日、博士から講義を受けるのが楽しみになっていた。任務をきっかけに、彼と親しくなれたらと思う。
レイン博士は目を見開いた後、微笑みを浮かべ、

「貴方と友人になれて光栄です、ルーク」

と言った。

作品名:【創作】「rain」【BL】 作家名:シャオ