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【創作】「rain」【BL】

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研究者というものは、時に突飛な行動を取る。ルークは、延々流れる雨の音を聞き流しながら、レイン博士の背中を見つめた。AIの研究についての質問は、博士の警戒心を解く為の口実でもあるし、個人的な興味からでもある。ルークは椅子を引き寄せると、腰を下ろして、博士から渡された封筒の中身を引っ張り出した。

『ルーク、今日は何の勉強をしたの? 僕に教えて』

学校から帰ると、何時も笑顔で迎えてくれたのは、「サイダー」と名付けられた家庭用ロボット『rain』。
ルークが生まれる前から父は軍人であり、母が亡くなった後も軍人であり続けた。
親戚の家に引き取られたルークは、実父の顔を写真でしか知らない。養父母はとても良くしてくれた。ルークが寂しい思いをしないように気を配り、実父のことを折に触れて話してくれもした。だが、ルークにとっての実父は、テレビや新聞、周囲の人間が伝える話の登場人物でしかない。実父の死を伝えられた時、ルークは無感動にそれを受け止めた。名前だけは知っている人物が、何処か遠くの地で亡くなった、それだけのこと。
ルークにとっての「家族」は、養父母とサイダーだった。

レイン博士と話していると、サイダーを思い出す。『rain』のAIを開発した当人を護衛する任務に着いたのは、何とも不思議な巡り合わせだ。

ふと、視線を感じてルークは顔を上げる。レイン博士が、穏やかに微笑んで此方を見つめていた。まるで、帰宅したルークを出迎えるサイダーのように。

「何処まで理解出来ましたか? 僕に教えてください」

優しい口調は、兄のサイダーそのもので。ルークは、少年時代に引き戻されたような気がした。

「はあっ!? あっ!! す、すみません!! つい癖で!!」

レイン博士が弾かれたように立ち上がったので、ルークも驚いて腰を浮かす。レイン博士は、足を滑らせたのか派手にひっくり返った。

「ひゃあああああああ!?」
「大丈夫ですか、博士?」
「だ、大丈夫です! 慣れてます!!」

その時、正午を告げるチャイムが鳴る。レイン博士はあわあわと立ち上がって、「昼ご飯買ってきます!」と叫び、部屋を飛び出していった。
一人残されたルークは、素早く机に近寄ると、引き出しを次々と開けていく。痕跡を残さないよう注意を払いながら、中身を確認していった。机が終わると、壁側のキャビネットを確認。室内のめぼしいものを粗方見終えると、パソコンに取りかかった。
書きかけのテキストは、博士が渡してきた資料の続きらしい。その他のデータに不審なものは見あたらないようだが、念の為、確認作業を続けた。


作品名:【創作】「rain」【BL】 作家名:シャオ