ジレンマ
「よしっ!」
と彼女は手を叩き言った
「ゲーセン行こうぜ」
私は正直戸惑った。
「誰かに見られたりしない?」
「まあ、サツに見つかったら即、補導だろうねぇ」
私は絶対行くもんかと思った。
「大丈夫だって。これがあればまず見つからないし」
そう言うとスカートのポケットから小さく折り畳まれた紙を取り出しひらひらと私に見せた。
それは、地図だった。木更津駅周辺の。それは、ただの地図ではなく赤い線で道に矢印が描かれ、4桁の数字がそばに書き込まれていた。
「それは?」
「サツの巡回ルートだよん♪うちらが独自に調査、研究を重ねて作り上げた自信作。敵のルートさえ掴んでれば、こっちのもんだよん♪」
さも、機嫌が良さそうに言った。
「そして駅前のゲームセンター髭男爵はうちの行きつけだから絶対安全。」
ゲームセンターの名前のセンスに驚愕しつつも、そう言われると、行ってもいいかなという気分になってしまった。
「そうと決まれば、さあ、行こう!」
「あ、まだ自己紹介してなかったっけ。うちは新田茜。あかりんとでも呼びな。あんたは?」
「西島葵」
「じゃあ、あおりん。よろしく♪」