ジレンマ
第二話 嘘は麻薬
飯島沙羅は私と同じクラスの子だ。
成績は正直言って普通だが、整った外国人風の顔立ちに程よく焼けた肌、男子にも引けを取らない運動神経を持ち合わせている。また、学級委員も務めており、クラスの中心的存在だった。
「チャイムも終わったし、授業始まっちゃうぞ」
女子の私から見ても、かわいいと思える顔で彼女は微笑んだ。
「ちょっと具合が悪くて。。。」
/嘘は麻薬だ/
使えば信じられないくらい楽になり便利なもの。ただ、使えば使うほど止められなくなる中毒性を持つ。それが、嘘と呼ばれるものだ。
「嗚呼、そうなんだ。お大事に。」
無関心そうにそう言うと、彼女は颯爽と走り去った。
そこには、罪悪感と寂しさを掻き混ぜたような「私」が残った。
元から、私に興味などないのだ。ただ単に話しかければ授業を僅かでもサボる事が出来る。それぐらいにしか考えていないだろう。
保健室が玄関の隣にあって心底感謝した。でなければ、不自然に思われてたに違いない。
私は極力、音を立てないようにそっと靴を履き替え学校を飛び出した。