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学校図書館より

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 ある日のこと、「なあ、これから海へ行かないか?」と私が唐突に切り出した。特に理由もなく、何気に海が見たくなったからが理由だったと思う。不意を撃つように無計画に突拍子も無い馬鹿なことを言い出すのは決まって私だった。そういった時はたいてい誰か冷めたメンバーが一人はいて「馬鹿なこと言うな」などと引き止めてくれバランスが取れるものだが、うれしいかな悲しいかな私の周りにそういった真面目かつ常識のあるやつはいなかった。
「行こう、行こう!」と数人が声を上げ、女子二人もその中に含まれていた。話が決まれば行動は早く「よっしゃ行こう」と鞄を持つと外へ出る。女の子は当然制服で下はスカート。しかしそんなこと気にもせず私の自転車の後ろに一人乗せ、同級生の後ろにも一人が乗ると男子生徒は各々の自転車に乗り数キロはなれた海岸へと漕ぎ出した。自転車の二人乗りなど気にもせず広い道を数人の高校生がワアワアと話しながら進んでいく。ボーリング場を過ぎ、直角に曲がった道路の先にあるコンクリート製の波返しのRがついた堤防が見えると目指す海岸はもう少し。
 どんどん走ると夏は海水浴客でにぎわう海岸に着く。自転車を降りて堤防を越すと人のいない遠浅の砂浜は潮が引き随分先まで歩いていけた。砂浜で何をする訳でもなくみんなで他愛も無い馬鹿話をする、若い時はどうしてなんなに一杯話すことがあるものだろうか。当時流行の青春ドラマよろしく日の傾きかけた太陽を眺め仁王立ちになったり、女子二人は潮の引いた砂浜を掘ってアサリを取っては「ほら~こんなに取れた」と喜び、それにつられた男子も食べもしないのに素手でアサリを掘っていた。勿論この女子たちに特別な感情を持ったものはいなかったはず。
 この浜も現在は水質悪化により海水浴場は閉鎖と聞いた、あれほど赤潮に悩まされ工場も生活排水も浄化されて尚、水質悪化とは何とも我々は大切な物を平気で失っているように思えてならない。
作品名:学校図書館より 作家名:のすひろ