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学校図書館より

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TVで青春ドラマがあったころ

それはまだ私が高校生の頃の話。入学して直ぐ担任より指名され私と同級生のA君二人は図書委員の任を仰せつかった。私の通っていた学校は各学年、学級から二名が図書委員として当番で学校図書館司書の手伝いとして本の貸し借りの手続きを行っていた。図書カード記入したり受け取った日にちを確認したりと簡単な作業で、利用する生徒もさほど居るわけでなく図書館のカウンターに座り暇な時を過ごしていた。当初当番回数も少なく、月に一二度行けばそのノルマは終わる。どうゆうわけかこの図書館での受け渡し業務と、なによりその場所が落ち着いてとても具合が良かったのでそこへ行く回数が徐々に増えていった。とはいえ生来無精者で勉強嫌いな私がそこで静かに読書の時間を過ごすことはなく、ただのんびりとした静かな時間がとても心地よく感じていただけだった。
 二年生も同じくA君と委員を行い月日は流れて三年になった時、年度初めの委員会ではA君が委員長、私が副委員長に立候補し訳無く満場一致でその地位を見事射止めることが出来た。始めは当番制だった貸し借り業務は一応存在していたものの、ほとんどはその場所がたまり場となっていた友人たちで行い、図書委員が来ても「今日は俺たちがやるからいいよ」と半ば当番制は形骸化し、当日役を免れた各図書委員は私たちがいてその声をかけてもらうと少しほっとしてうれしそうに下校していった。
 そんな仲間のたまり場の中に一年後輩の女の子二人もいた。日中は校舎も違い全く顔を合わすことの無いこの二人と放課後になるとよく図書館で一緒になっては司書の出してくれるお茶やコーヒーを飲み、静かに時に騒がしく談笑を重ねたもので、学校前にあるパン屋で売られている小分けにされた『ブルボン ルマンド』なる、この世のものとも思えないほど美味しいと感じたお菓子を数個買って来ては出されたコーヒーの供にしたこともあった。
 当時の学校は今とは違いそれはおおらかだった。いつものように集まっていると一人の教師が入ってきて司書に「おい!コーヒーを入れてくれ」という。司書は嫌がりもせず「はい」と返事をするとポットでお湯を沸かす。少しして出されたインスタントコーヒーは私たちの分も入っていて、カップからは薄らと湯気が上がっていた。その教師、やおらロッカーの下段にある扉をけると中からウィスキーの入ったボトルを取り出すと数滴コーヒーに垂らす。それを見ていた私たちに「お前たちも入れるか?」と問うものだから全員無言のままただコクッと小さくうなずくと、教師は私たちのカップに同じように注ぎ「これが入っていないと美味くないな」と小声でいうとカップを口に運んだ。そして私たちもそれを味い、飲み終わった教師は「よし、これでもう一仕事」と何事もなかったように図書館を後にした。 誠に信じられない学校図書館であった。今朝ドラの影響でウィスキーが見直されているらしいが、今日学校に酒類が置いてあるだけで教師は懲戒処分になる話で、少量とはいえ校内で生徒に酒類を飲ませとなれば確実に首が飛ぶであろう。
作品名:学校図書館より 作家名:のすひろ