連載小説「六連星(むつらぼし)」第41話 ~45話
連載小説「六連星(むつらぼし)」第45話
「ヒューマンエラー」
浩子は、掌の中でキラキラと輝いているさくら貝を懐かしそうに
見つめている。
「人は、思いがけず間違いを犯します。
間違いたくはありませんが、結果として間違うこともあります。
私の場合は今思えば、あの時の決断はやはり誤りです。
少女がくれたこのさくら貝を見るたびに、やはりその事を思い出します。
ほろ苦い思い出ですねぇ。やっぱり」
「私はそうは思いません。被災地での勇気ある行動だと思います。
でもやはり、混乱した被災地の、緊急を要する医療の現場では、
許されないことなのでしょうか」
「幸運も有りました。他に重症の患者さんがいなかったため結果的に、
混乱状態に至らずに済みました。
結果が、単に、幸運だっただけです。
看護師としての資質をあげるために、私はもっと努力する必要があります。
そう思った矢先、残念ながら、体調を崩してしまいました・・・・
身体を整えて、ここからまた再出発の予定です。
ところでお嬢さん、いえ、響さん。
ヒューマンエラーと言う言葉は、ご存知ですか」
作品名:連載小説「六連星(むつらぼし)」第41話 ~45話 作家名:落合順平