連載小説「六連星(むつらぼし)」第41話 ~45話
連載小説「六連星(むつらぼし)」第44話
「がれきの中の桜貝」
奥松島パークラインは、松島湾沿いの仙石線と並行して北上する。
野蒜駅を過ぎると、鳴瀬川と吉田川の河口に最接近する。
河口には、大規模な港を作ろうとしたときの、古い遺跡が残されている。
『野蒜築港跡』と呼ばれるもので、着工は明治11年までさかのぼる。
港を作り、河口に市街地を造成するという壮大な事業だ。
北上川と松島湾を運河で結ぶという構想も有り、当時としては画期的な規模だ。
明治17年。松島湾を襲った台風のため、一瞬のうちに港が崩壊する。
壮大な計画が頓挫する。
本格的な国際貿易港として、明治時代に誕生するはずだった野蒜築港は、
計画が白紙に戻り、"幻の港"として遺構だけが残されている。
「金髪のお兄ちゃん。
橋を渡ったら、すぐ山の方向へ曲がってください。
すこし走るとその先に、三陸自動車道の鳴瀬奥松島ICが現れます。
そこが、伯父さんが居るはずの仮設住宅です。
高速道路に隣接してつくられた、奥松島ひびき工業団地という処です。
仮設住宅は分譲するはずだった敷地を利用して、建てられています。
お兄ちゃん。急ぎたい気持ちは解ります。
でもアクセルは『ひかえめ』でいきましょうね。
目的地までは、あと、ほんのわずかです。
あせらず、安全運転でまいりましょう」
作品名:連載小説「六連星(むつらぼし)」第41話 ~45話 作家名:落合順平