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弁護士に広げたかった大風呂敷

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6 一人三役



思い返せば
返すほど
俺は敗色濃厚だ

裏切り者の
烙印押して
魔女に唾でも
吐くみたいに

正義をかさに
一方的に
先生の非を
攻め立てた俺が

弁解の
べの字もしない
先生に完敗

俺の捨て鉢な質問に
口をつぐんだ
先生の顔

これっぽっちも
悪びれてなんか
いなかった

自分から先に
言い出せなかった
後悔と

裏切るような
やましいことを
してはいないと
いう自負と

弁解がましい醜態は
見せるもんかという
意地と

あと
もうひとつ

これが
俺の自惚れだったら
笑ってくれ

俺とはもう
終わりだという
無念さと

あのときの
先生の顔に
浮かんでたのは
それだけだった
俺には
そう見えた

見まちがいか?

シラフの廃人が
泥酔して
真人間に戻ったんだ

ソウルの夜空の
満天星に
乾杯だな

自分で始めた
独り相撲の

決着ぐらい潔く
自分でつけろと
観念したら

先生の無実の
証拠なんか
いともわけなく
手に入って

納得して
安堵して
拍子抜けした

先生は
やっぱり
“面背腹従”で

どうひいき目に
見たところで
頑強なとは
言えないが

少なくとも
この俺が
自分を丸ごと
預けるに足る
誠実無私の
砦だった

めでたいもんだ
誰に頼まれた
わけでもないのに
俺はあたふた
一人三役

検事みたいに
告発し
弁護士みたいに
先生の無実を立証し
判事みたいに
無罪を告げて

一人あたふた
忙しいこと
この上ない

先生
完敗だ