弁護士に広げたかった大風呂敷
17 受けるべき罰
罰を受けろと
神様が言ってる
もうすでに
女をひとり
充分不幸にした男が
人並みに
幸せな目を
見ようだなんて
ゆめ思うなと
蒔いた種なら
しらばっくれずに
自分で刈れと
だから先生
時間をくれ
勘違いして
「5日」と聞こえた
ふりをしたけど
俺もそこまで
バカじゃない
「1年」と
言ったんだよな
先生は
でも敢えて
「5日」と聞こえた
ふりをした
そして勝手に
それでも長いと
時間切れだと
打ち切った
身から出た錆
清算は
いつかしなくちゃ
だから1年
国を離れる
先生自慢の天秤に
堂々と
乗っかるために
いつ何どきでも
天下一品の
風呂敷で
いられるように
俺は先生に
1年もらう
死んだ気で
けりつけて来る
男ってのは
いつだって
晴れがましい顔
したいんだ
少なくとも
自分が惚れた
女の前では
わかってくれって
言ったところで
無理だろな
先生は
女だもんな
だから先生は
俺を憎んで
恨み倒して
奴の所へ
行ってもいい
当然だ
逃げるなと言う
張本人が
夜逃げ同然
雲隠れ
こんな卑怯で
勝手な仕打ち
先生が
愛想尽かすなら
それこそ俺が
受けるべき
最大の
罰なんだろうと
覚悟はしてる
その昔
一人の女を
幸せに
してやれなかった
そもそもの罰
仕事を愛し
会社を信じた
罪のかけらもない
部下たちを
崖っ淵まで
追い込んだ罰
依頼人という
立場を盾に
雇ってこのかた
徹頭徹尾
先生を
振り回した罰
俺が
受けなきゃならない罰は
あまりにも
多いな
作品名:弁護士に広げたかった大風呂敷 作家名:懐拳