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ワン! だ フル!~第1話~

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幼い頃。俺はまだ不幸な出来事に、悩まされてはいなかった。
それも当たり前だ。
大人になった今だからこそ学習したが、昔はなにが起こるかわからなかった。
不幸な事が起こるとは思わず、「明日は良い事がある!」と思い、毎日が楽しかった。
強いて言うなら昔から、動物は好きだったと言う事だ。

俺は近所にいる犬や猫を探しては、撫でたり餌をあげたりと、気ままな毎日を送っていた。
俺はいつものように犬猫達と遊んだ後、この近所にある橋を帰り道としていた。
そんな中俺は川で覚えてる子犬を見かけ、すぐさま俺は救い出した。
おかげで俺は風邪を引き、楽しみにしてた修学旅行も行けなかった苦い思い出が出来たが……。
「本当にあの時の子犬…?」
「はい!思い出してくれて、なによりです!」
俺はまだ唖然としていた。
あの時の子犬がナツだったと言うのもそうだが、まさかこんな形で再会するとは思わなかったからだ。

あの時不思議だったのは、助けた子犬がすでにいなかったと言う事だった。
俺は子犬を抱きながら、病院に運ばれた事を今でも覚えてる。
夢の中で子犬はどこかに行き、それが正夢のように抱いていた子犬も消えてしまい、疑問になっていた。
あの時はさほど気にならなかったし、気にする事もないだろうと思っていた。
「どうしてあの時、急にいなくなったんだよ」
本当かどうかはわからなかったが、俺は言わずにはいられなかった。
「”犬国”に帰らないと行けなかったためです。”人国”にいられる時間は限られていて、私は”恩返し”も出来ずに帰ってしまったのです…」
ナツはペタンと耳を下げ、悲しそうな声を出した。

「ですがアナタは今まさに、不幸な出来事ばかりに出会ってる最中!ようやく”恩返し”が出来ると思いやってきました!」
眩しい笑顔を俺に向けてくるナツ。
「悪いけど…俺には”恩返し”なんて必要ないし、いらないよ。さっさと”いぬこく”にかえー」
「帰れません…」
急に涙目になり、下を向きだした。
「”犬国”に帰るには掟は絶対。掟通りにしないと、私は永久にここにいる事になってしまうのです!お願いです!”恩返し”をさせてくれませんか?」
涙をふくみながらこっちを見て、俺の手を握るナツ。

事情は大体わかったが、俺は厄介な事は引き受けたくない。
いつもなら、適当に扱い追い出すだろう。
しかし今回は、俺が原因で招いた出来事だ。
これも一種の”不幸な出来事”なんだろう。そう思った俺は、ため息が出てしまった。
次第に俺は、「わかったよ、そう言う事なら仕方ない」と言ってしまった。

「ありがとうございます!ハル様!さっそく”恩返し”をー」
「待った。今日は疲れてるし、明日にしてくれないか?家で休みなよ」
とにかく明日、カンナにも事情を話してなんとかしてもらおう。
そう思い、俺はナツを邪険に扱うように丸めこんだ。

しかしあの時の子犬だったナツがやってきた事が、俺にとって不幸で、そして楽しい毎日を送れる事。
俺にとって、本当に大変な毎日になると言う事。
それに気付くのは、まだずっと先の事だった…。