ぶろぐがわり
函館山
車を走らせて、函館山の頂上に着いたのは何時でしょうか。少なくとも、まだ出店はやっていませんでしたので、十時前か九時前か、おそらくそのくらいでしょう。
暖かい、暖房の効いた車から降りた瞬間、その身に冷風が覆いかぶさるように襲います。
「あぁぁ! さむぅい!」
強い風です。しかも、良く見たら雪が降ってます。まだ十一月でそんなに雪が降る時期でもないというのにです。そもそも道南の函館は雪も少ないはずですが、運悪くこんな天気に遭ってしまったようです。
「いくぞぉお!」
そう気合を入れて展望台に向かいます。函館の夜景が綺麗と言うのはみなさんきっとご存知でしょう。しかし、今はあいにく早朝。しかも曇り、雪、風、観光には向かない状況です。
それでも展望台で写真をぱしゃぱしゃ撮るのは、観光に来た意地でしょうか。寒さに震えながらシャッターを押します。
「も、戻らない?」
「売店、開いてないの?」
「あと十五分くらいで開く!」
ひとしきり写真を撮った後、私たちは車に戻り売店が開くまでしばし休むことになりました。なんとも、まぁ、車の暖かいこと。
売店では昔一度食べたりんごのまるまる入ったバームクーヘンを買いました。一つ六百か千円か、少なくともその間ほどの価格だったと思います。バームクーヘンは口の水分が持っていかれますが、これはりんごが入ってますのでそこまでもっていかれることも無いですし、おいしいですよ。
買い物を終えてしばらく店内をうろついていると、あるものを見つけました。一つが、左右から押すと空気が抜けて、豚の鳴き声のような音を出す豚の人形(豚形?)。そしてもう一つが、『アナと雪の女王』でおなじみの『オラク』、雪だるまのアレです。
このオラクスイッチがついていまして、それを押すと一定時間外の音を録音するんです。そして録音が終わると、その間に入った音を精一杯のオラク風になるように加工して音を出すんです。
今手元にあるのは豚の鳴き声を出す豚形。もしこれを、オラクに聞かせたらどうなるでしょう……? 居ても立ってもいられず、スイッチを入れて豚を押します。ぶぅぶぅぶぅ、と。するとオラクはいいました。
「ぼぉぼぉぼぉ」
――ん? なんか魔王っぽい。そう思い、豚の鳴き方を変えてみます。ぶぅーっぶっぶっぶ。
「ヴァーッハッハッハ」
これはオラクではありません。魔王です。字面ではそう伝わらないでしょうこの魔王感。完全に魔王が高笑いしている声なのです。腹の底に響くような、恐ろしい声なのです。オラクの声が!
私はしばらくオラクで遊んで、友人たちにもそれを聞かせました。そうこうしているうちに、みんな、お土産を買い終わったようです。そして私たちはお昼ご飯を食べるために函館山を下るのでした。