連載小説「六連星(むつらぼし)」第36話~40話
連載小説「六連星(むつらぼし)」第37話
「日和山公園の周辺で」
河口近くに迫った北上川の流れは、日和山の稜線をゆっくり回り込む。
大きな蛇行をみせたあと、海に向かって流れ込んでいく。
日和山は高さ56メートルあまりの丘陵だ。
おおくの石巻市民から、桜の名所として親しまれてきた。
すぐ近くに、石巻専修大学の広大なキャンパスが広がっている。
震災発生の直後から、多くのボランティアたちが、ここへテントを張った。
横に整備されている石巻市総合運動公園は、自衛隊の拠点として
災害支援の最前基地になった。
3月11日のあの日。
海側のエリアに暮らしていた住民たちは、津波の襲来を避けるため、
日和山の山頂へ避難を急いだ。
おおくの人たちが日和山の山頂から、信じられない光景を目のあたりにする。
押し寄せた大津波が、沿岸部に並ぶ建物を次々と呑み込んでいく。
家と車と大量のがれきを押し流しながら、大津波はまたたく間に
日和山の山麓を取り囲む。
山頂に避難した住民たちは、この信じられない光景をなす術もなく、
目撃することになる。
作品名:連載小説「六連星(むつらぼし)」第36話~40話 作家名:落合順平