あたたかい場所
ミリヤ じゃぁなんで誰も助けてあげなかったのよ！
またそうやって口だけなんでしょ？
偽善者！
シュン だからもう一回チャンスをくれ！
わかったんだ
俺は、本当に口だけだ
こうやって痛い目見ないとわからない
でも、それでようやく気付いたんだ
俺が間違ってたって
悪かったんだって
今度は絶対に間違ったりしない
ミリヤ 絶対なんて、そんなのわかんないでしょ！
シュン なら、お前が見張っててくれ
今度もし同じようなことがあったら・・・そのときは・・・
ミリヤ ・・・・
シュン ・・・悪い、俺が何とかするって言うのは嘘じゃない
でも、アイツの必死な顔を見てわかった
アイツにはお前が必要なんだ
ミリヤが一番近くで、支えてやってほしい
だから、一緒に帰ってきてくれ
ミリヤ ・・・・
シュン 頼む！
コウスケを壊さないでくれ・・・
アイツを助けてくれ・・・っ！
ミリヤ 上手へハケようとする
シュン ミリヤ！
ミリヤ 待って！
・・・待って、わかったから・・待って・・・
ちょっと、考えさせて
ミリヤ 上手 ハケ
○照明 暗転
●音響 Ｍ５ 時計の音
観測者 上手側に板付き
○照明 明転
ミリヤ 下手から出
観測者 やぁ、ミリヤちゃん
シュンさんとの話は終わったのかい？
ミリヤ ・・・わからなくなりました
観測者 何が？
ミリヤ ・・・このままで良いのか
観測者 それは、２人が決めることじゃないかな？
ミリヤ ・・・何で教えてくれなかったんですか
観測者 なんでも何も、ミリヤちゃんが何も聞かないまま
お願いしますってきたんだよ？
知ってるものだと思ってた
ミリヤ ・・・・私が、悪いんですか
観測者 待って待って、悪いなんて言ってない
ただ、君があまりにも・・・現実を知らないだけだ
わからないまま何かをするのは・・・愚か者だよ
ミリヤ ・・・・先生は
観測者 ・・・・
ミリヤ 先生は、どういうつもりなんですか？
観測者 どういう？
ミリヤ 施術を受けたら壊れる
わかってて、なのに
何も感じないんですか？
思わないんですか？
観測者 ミリヤちゃん
そうやって、自分の定規だけで測るのはよくない
ミリヤ これは、一般的な考えだと思います
観測者 一般、ねぇ・・・
そうだね
世間一般的には、間違ってるかもしれないね
でも、そこから外れてしまった人間がここにくるんだ
コウスケ君もそうでしょ？
そんな彼らが幸せになるためには、一般論じゃ無理だと思わない？
ミリヤ ・・・だからって
観測者 理解できないと思うけど
彼らは本当に幸せなんだよ
大好きな人と一緒にいられるんだからね
２人だけで完結された世界なら、何の問題もないじゃないか
ミリヤ ・・・・・
観測者 ミリヤちゃんは、こちら側の人間ではないんだろうね
ミリヤ ・・・・・
観測者 まだ間に合うよ
どうする？
●音響 Ｍ５ Ｃ・Ｏ
ミリヤ ・・・帰ります
帰って、コウスケを支えます
観測者 ・・・・わかった
じゃぁ、コウスケ君に話しておいで
話がついたらまた僕をよびにきな
すぐに戻してあげる
ミリヤ 下手ハケ
観測者 ・・・準備しないとね
観測者 上手ハケ
○照明 暗転
コウスケ 下手側板付き
○照明 明転
コウスケ 膝を抱えて座っている
ミリヤ コウスケ（上手袖中から）
ミリヤ 上手から出
コウスケ ミリヤ
良かった
起きたらいなくて、なかなか帰ってこないから何かあったのかと・・
ミリヤ ・・・・
コウスケ どうかした？
ミリヤ ・・・・話があるの
コウスケ どうしたの？
なんか、あった？
ミリヤ ・・・・帰ろう、コウスケ
コウスケ ・・・・なに？
ミリヤ 帰ろう
コウスケ ・・・・どこに？
ミリヤ 外に帰ろう
コウスケ ・・・待ってなに
どうしたんだよ？
ミリヤ ごめんなさい
コウスケ ・・・・
ミリヤ こめんなさい・・・
私、何も知らなくて
コウスケ壊しちゃうところだった
コウスケ 壊すって・・・
ミリヤ 私が間違ってた
コウスケが受けた施術は
『他人から受ける、負の感情』を忘れるってことだけじゃなかったの
無理やり心をコントロールするから、精神や人格にまで影響が出てしまう
危ないものだったの
精神が衰弱していって、頭がおかしくなって、心が壊れちゃう
コウスケ ・・・ちょっと、待って
何、それ
誰がそんなこと
ミリヤ シュンさんが言ってた
コウスケ シュン・・・？
アイツが、俺たちを連れ戻す為に嘘でもついたんじゃないのか？
ミリヤ 先生もそうだって
コウスケ ・・・・
ミリヤ それに、タツヤさんがおかしくなってるのも見たの
私やコウスケのこと忘れてて、目もなんだかおかしくて
レイさんは、タツヤさんが廃人になるかもしれないって言ってた
コウスケ ・・・・
ミリヤ 本当にごめんなさい
こんなことになるなんて知らなくて・・・
取り返しのつかないことをしちゃうところだった
レイさんは、自分のことは忘れないからそれで良いんだって言ってたけど・・・
でも、そんなの・・・
コウスケ だから、帰ろうって・・・？
ミリヤ 今ならもとに戻れるんだって
先生が治してくれるって
コウスケ ・・・・
ミリヤ ・・・コウスケ、行こう
先生のところ
コウスケ ・・・嫌だよ
ミリヤ え？
コウスケ 嫌だ、帰りたくない
ミリヤ コウスケ・・・
コウスケ 帰ったって、俺の居場所なんかどこにもない
またあの生活に戻れって言うのか？
絶対嫌だ！
ミリヤ コウスケ！
落ち着いて！
コウスケ だって、だってやっと
やっと幸せになれると思ったんだ
ここにいれば、幸せになれるんだ
ミリヤ でも！
心が壊れちゃうんだって！
コウスケ それでもいいよ！
どうなってもいい
ミリヤとここにいたいんだ
ミリヤ ・・・・
コウスケ 怖いんだ
外は怖い
ここがいい
ミリヤ ・・・・・コウスケ
私は、壊れる貴方を見たくないよ
コウスケ ・・・・見捨てるってこと・・・？
俺を置いて行くのか？
ミリヤ 違うよ！
絶対にそんなことしない！
コウスケ だったら俺とここにいてくれよ