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あたたかい場所

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観測者  ・・・はい
     僕は構いませんよ
アン   ・・・記憶操作っていうのは、もう元に戻せないの?
観測者  前例はありませんね
アン   そう・・・
     前例がないだけで、不可能じゃないのね
観測者  ・・・・

 シュン 上手から出

観測者  シュンさん
シュン  ・・・さっきの話、あれ、コウスケもそうなのか?
アン   ・・・誰?
観測者  1週間ほど前に新しく来た方の、幼馴染さんです
アン   ・・・お仲間ってこと
シュン  なぁ、教えてくれ
     壊れるってなんだ?
     さっきいたアンタの兄貴
     アンタのことわかってないのか?
     普通じゃねぇだろ
アン   人の傷えぐらないでくれる?
シュン  あ、悪い、だけど、俺も・・・
     いやでも・・・
アン   ・・・・何?
     悪いけど、私、これからどうするか考えないといけないから
シュン  待ってくれ!
     アンタも大変なのは、わかってる
     でも、すまない、少し、時間をくれ
     頼む・・・っ!
アン   ・・・・少しだけだから
シュン  ・・・ありがとう・・・っ!
俺の幼馴染も、ここに連れてこられたみたいなんだ
     でも、もうその記憶操作っていうのは終わっちまってるみたいで
アン   ・・・1週間前なんでしょ?
     じゃあまだ・・・
     ねぇアンタ
観測者  はい?
アン   定着っていうのは1ヶ月かかるんでしょ?
     じゃぁ、それまでの間ならまだ間に合うってこと?
観測者  間に合うというと・・・?
アン   正気に戻れるかってことよ
観測者  ・・・えぇ
     うまくやれば、感情を思い出させることは出来るでしょう
アン   だって
     良かったわね
     私と違って・・・・間に合って
シュン  あぁ・・・だけど、俺は
アン   ・・・何よ?
シュン  俺は、本当にコウスケを連れ戻して良いのか・・・?
     アイツを連れ戻すことが、アイツのためになるのか・・・?
アン   ・・・・
シュン  ここにいれば幸せになれるって言ってた
     確かに、壊れるかもしれない
     けど、それでもアイツが幸せになれるなら
     それを奪うのはあまりにも自分勝手なんじゃないのか?
アン   ・・・・
シュン  現に俺は、ずっと近くにいたのにアイツの苦しみを理解してなくて
     知ってるだけで
     何もしてやれなくて
     こんなところに来るほど追い込れてるなんて気づかなかった・・・
     それをわかってやれたのが、ミリヤで
     彼女と一緒に生きていくのを本当に望んでいるなら・・・
     それが・・・コウスケの・・・
アン   ・・・・
シュン  コウスケの幸せなら
     俺は・・・一人で帰ったほうが・・・
アン   ・・・そう
シュン  ・・・・
アン   ・・・じゃあね
シュン  ・・・・

 アン 上手へハケようとする

シュン  だってそうだろう!

 アン 止まる

シュン  アイツのことを思ったら、それが良いのかもしれないって思うだろう!
     初めて自分の意思で・・・
あんなに人の目ばっか気にする奴が初めて自己主張したんだ
幸せになりたいって
声荒げて・・・必死で・・・っ!
なら、それを叶えてやりたいと思うのが普通なんじゃないのか?
アン   ・・・・
シュン  何で、何でアンタはそんな風にいられる?
     帰ってきて欲しい兄貴には無視されて
     女にはボロクソに言われて
     なのになんで諦めないでいられるんだ!
     何で連れ戻そうと思える!?
     自分が間違ってるかもしれないって思わないのか!?
アン   ・・・思わない
シュン  アンタだって、兄貴を助けられなかったんだろ?
     だからこんな風になったんだろ!?
アン   だから連れて帰るんでしょ!?
シュン  ・・・・っ
アン   さっきから聞いてれば、アンタ何なの?
     自分が一番苦しいんだって顔して、犠牲者ぶってんの?
シュン  ・・・・なんだと
アン   もし本当に、このまま帰ったほうがその幼馴染の為になると思ってるならそうすれば良いじゃない
     誰もアンタを責めたりしないよ
     アイツのためだって胸をはって帰ればいいじゃん!
シュン  ・・・・
アン   そこで悩むんだったら、アンタにとってその人はその程度の人間だったってことだよ
シュン  ・・・・っ
アン   アンタに説教する義理はないけど、ムカついたから言わせてもらう
     覚悟もしてない奴が、他人を助けたいなんて思うな!
     アイツのためアイツのためって、逃げ道ばっかつくって
     本当に大切だと、助けたいと思ってるんなら
     壊れてもいいなんて思うはずないでしょ!?
     何が何でも連れて帰ろうと思うでしょ!?
シュン  ・・・連れて帰ったらって、アイツが幸せになれるとも限らない
アン   アンタ馬鹿じゃないの!?
幸せにするんだよ!
     私達は間違っていた
     お兄ちゃんを傷つけてしまったのは事実だ
     だから今度こそは間違っちゃいけないんでしょ
     ここで見捨てて、お兄ちゃんのためだからって一人で帰ったら
     それこそまた同じことじゃない
     目を覚まさして、一緒に帰って、今度は私たちがお兄ちゃんを幸せにしてあげるんでしょ!?
     私はその覚悟があるから、だから迷わないし間違ってるとも思わない
     もう、あんな風にさせない
     あんな・・・壊れていくお兄ちゃんなんて・・・見たくない・・・っ!
シュン  ・・・・
アン   私は・・・私達は・・・こんなに時間掛かっちゃって
     あの女すごく頭良くて、全然見つからなくて・・・
     やっと見つけたと思ったら・・・もう・・・
シュン  ・・・・
アン   でも、でもアンタは違うでしょ!?
     まだ間に合う・・・助けられるんでしょ!?
     助けたいって思ったんなら、だったら絶対助けなさいよ!
シュン  ・・・・ありがとう
アン   ・・・・言っておくけど
     私は絶対にお兄ちゃんを連れて帰るからね
シュン  あぁ・・・俺もだ

 アン 上手ハケ

シュン  アンタは止めたりしないんだな
観測者  はい
     私はあくまで中立ですから
シュン  じゃぁ、俺の頼み聞いてくれるよな
観測者  何でしょう?
シュン  コウスケ達ははどこにいる
観測者  ・・・こっちです

 観測者・シュン 下手ハケ

○照明 暗転

 タツヤ・レイ 上手側に板付き

○照明 明転

 ミリヤ 下手から出

ミリヤ  あ、タツヤさん、レイさん
レイ   どうも、ミリヤさん
     コウスケさんは一緒じゃないの?
ミリヤ  はい・・・
     実はさっき、コウスケを連れ戻そうと彼の幼馴染が来ていて・・・
レイ   あら・・・大変でしたね
ミリヤ  はい
作品名:あたたかい場所 作家名:ころん