小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

あたたかい場所

INDEX|6ページ/11ページ|

次のページ前のページ
 

     もう彼の心が、貴方達家族に向けられることはありません
アン   ・・・なにそれ
     アンタ、お兄ちゃんにまた何かしたの!?
レイ   またって・・・別に
     以前来たときにお話した施術だけですよ?
     ただそれが完全に彼の心に定着しただけです
アン   ・・・定着?
     何、わかるように話なさいよ
レイ   定着してしまったら、もう、元には戻れないって事ですよ
アン   何言って・・・
     所詮、催眠みたいなもんでしょ・・・?
     そんなの、一時的なものじゃない・・・
レイ   そうなんですか?先生
観測者  え!
     あーいやー・・・
     正確には催眠ではなくて、記憶操作と言いますか
レイ   だそうです
アン   ・・・記憶・・・?
     アンタ達お兄ちゃんに何したんだよ!
レイ   そんなに怒鳴らないでくださいよ
これは、貴方のお兄さんも望んだことなんですよ?
『他人から受ける、負の感情』を忘れたいって
アン   だから何よ
     それがもし定着しても、心が向かないのと何の関係が
レイ   さてアンさん、ここで問題です
タツはね
     貴方達家族に負の感情を抱いていました
こんな風に―――・・・
タツ   何で皆わかってくれないんだ
     ボクはただ、レイと一緒になりたいだけなのに
     何で邪魔ばっかりするんだ
     今まで、期待には全部応えてきた
     言いなりになってきた
     なのに、ボクの願いは1つも叶えてくれないんだ
     酷いよ・・・酷いよ・・・っ!
レイ   本当に、なんて残酷なんでしょうね?
そんな彼に、貴方達から受けた負の感情を忘れさせてあげました
     さて、タツの心には何が残ったでしょうか?
アン   何って?
レイ   正解は、何もありません
     彼にとってアンさんたちは、あってもなくても、どうでも良い存在になったんです
     感情がない、無関心
     無価値・・・
     嫌われることも出来なくなりましたね
アン   ・・・・
レイ   それに対して、私はどうでしょう?
タツヤ  レイはボクの話をちゃんと聞いてくれる
     わがままを言っても、叶えてくれる
     傍にいてくれる
レイ   私と接することで、彼の心はプラスになっていく
     満たされていく
     それに、もともとプラスとマイナスで保たれていた心は
     負の感情を忘れたことによって、より多くの正の感情を求める
     結果・・・彼は私に依存する
アン   ・・・・
レイ   わかっていただけましたか?
     もう貴方の出る幕はないんです
アン   ・・・まだ、まだ間に合う!
     お兄ちゃん、目を覚まして!
     私の声を聞いて!
タツヤ  ・・・
アン   お願いだから!
     お兄ちゃん!
タツヤ  ・・・・
アン   ・・・・
レイ   あまりいじめないでください
     ただでさえ、不安定なんですから
アン   不安定・・・?
レイ   あぁ・・・
     まぁ、今更貴方にどうすることも出来ませんから、良いですかね
     教えてあげます
     外部からの感情のコントロール
     忘れるさせるという操作
     それによって、彼の心、精神はだんだん衰弱していくんですよ
     それを、そうやって無理やり思い出させようとすれば・・・

 タツヤ 苦しむ

アン   お兄ちゃん!?

 タツヤ アンを突き飛ばす

アン   ・・・・っ
タツヤ  レイ・・・レイ・・・レイレイレイレイレイ・・っ!
レイ   大丈夫よタツ
     私がいる
     ずっと傍にいる
     大丈夫・・・大丈夫よ
タツヤ  レイ・・・
レイ   ・・・私がいなければ、彼は壊れます
     でも私さえいれば、彼は幸せなまま暮らしていける
     お兄さんのことを本当に思っているなら
     もう関わらないでいただけますか?
アン   ・・・・
レイ   ふふ
ねぇアンさん
実に滑稽だとは思いません?
     生まれた時に将来を約束されたこの男は、貴方達ではなく私を選んだんですよ
     何も持っていない、私をね
     やっと、やっと手に入った
     私と違って、生まれた時から全てを持っている彼を
     私が奪ってやった!
     本当に馬鹿で、愚かで・・・愛しい
アン   狂ってる・・・やっぱりアンタは狂ってるんだ・・・っ!
レイ   えぇ?
     何ですかそれ
     愛している人の全てが欲しいというのは当たり前のことでしょう?
アン   こんな風にお兄ちゃん壊して、それで手に入れる?
     ふざけないでよ!
     アンタのそれは、ないものねだりの子供
     それを力ずくで奪い取る、お兄ちゃんのことなんて全く考えてない
レイ   だからこれは、お兄さんも望んだんですよ?
アン   アンタがそう仕向けたんだろ!
     だからアンタは駄目だったんだ
     お兄ちゃんの弱さにつけこんで・・・っ!
レイ   面白いことを言いますね
     その弱さの原因は、貴方達家族ですよ?
     それを全部私のせいにするなんて、そちらこそ自分勝手じゃありませんか?
アン   ・・・・っ
     でも、やり直すことは出来た
     その可能性を・・・未来を、アンタは奪った!
レイ   甘いですね
     ・・・どうせ、私がタツを奪わなければ
     こんな風に彼をしっかり見ることなんてなかったくせに
アン   ・・・・・
レイ   アンさん
     想像してみてください
     春の暖かい風や柔らかい日差しを
     太陽とシーツに包まれながら眠る安らぎを
     彼のそれは、ここで私と生きることなんですよ?
     それを、貴方は奪うのですか?
     大好きなお兄さんから
アン   ・・・・人殺しが
レイ   私からしてみれば、彼を連れ戻そうとしている貴方達の方が
人殺しほど非情じゃないかしら
アン   お兄ちゃんのことを本当に思ってるなら、連れ戻すに決まってるじゃない!
     だから絶対連れて帰る!
レイ   ・・・・
アン   お願いお兄ちゃん!
     ここは駄目なの!
     周りをよく見て
     ここは作られた場所、死んでる場所なの!
     本当なんて1つもない、全てがつくりもの
     お兄ちゃんのその心も作られたものなんだよ
     そんな世界で、本当に幸せになれるわけないじゃん!
     お兄ちゃん!
     お願い、目を覚まして・・・
     私をみてよ・・・
タツヤ  ・・・レイ
     ここはうるさいね
     早くボクたちの部屋に帰ろう
レイ   そうね
     帰りましょう

タツヤ・レイ 下手ハケ

観測者  ・・・大丈夫ですか?
アン   ・・・・
観測者  ・・・・
アン   ・・・あきらめないから
作品名:あたたかい場所 作家名:ころん