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連載小説「六連星(むつらぼし)」第31話~35話

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 「あら、詳しいのね。英治は」

 「ばかやろう。何度こいつに乗っていると思ってんだ。
 仕事で来るたびに、いつもここでこいつを聴かされているんだ。
 猿でも覚えるさ」

 「ふぅ~ん。じゃ、私は猿以下だわ」

 「そう言う意味で、言ったわけじゃねぇ・・・」英治が苦笑を洩らす。

(そうだ。高校野球の開会式で良く聞く曲だ・・・懐かしいリズムだな。
でも福島と言えば、3月11日の震災で、第一原発が壊滅的な被害を受けたはず。
放射能騒ぎで、いまだに混乱が続いている現地のはずだ。ここは。
ついに足を踏み入れたんだ、私は・・・・3月11日の被災地の現場に。)
響の背筋に、ぞくりと冷たい感触が走る。



 2011年3月11日14時46分。
三陸沖で、マグニチュード 9.0という大地震が発生した。
日本の観測史上で最大級にあたり、アメリカの地質学調査所によれば
世界でも、1900年以降、4番目の規模にあたる。

 同時刻。、稼働中だった福島第一原発が、地震によって被災する。
1号機(46万kW)、2号機(78.4万kW)、3号機(78.4万kW)が
地震により、自動的に停止する。
4号機から6号機は、規定による定期点検中のため、ともに停止中。
東京電力が同敷地内で記録した地震による揺れの、最大加速度は、
安全範囲内とされる同基準値内の、448ガル。
経済産業省の「原子力安全・保安院」が同原発の耐震安全の最大値としている
600ガルの、4分の3にあたる。
このままなら原発は、致命的な事故に至らなかった。

 だが本当の悲劇は、地震から30分後にやって来た。
地震によるダメージをはるかに上回る緊急事態が、原発を襲う。
想定をはるかに上回る津波のため、原発は、送電と受電のための電気設備を
すべて失ってしまうことになる。

 設計上、安全とされた範囲の揺れの影響を受け、1号機から4号機までの
受電設備が、最初の損傷を受けていた。
次いで5号機と6号機も、原発西側に設置されていた第27号鉄塔の倒壊のために、
こちらの送電も止まってしまう。
どちらかの電源が確保できていれば、発電所内部で相互に、
融通できるシステムが存在していた。
ここから全機が、受電不能状態に陥っていく。
電源を失ったことで、原子炉の崩壊が、ここから一気に進むことになる。

 一度は、非常用電源(ディーゼル発電機)が起動する。
だが大規模に襲ってきた津波のために、これも次々と破壊されていく。
41分後の15時27分。第一波の大津波が、停電中の福島第一原発を襲う。
さらにこれ以後、数次にわたり大きな津波が、原発に繰り返し繰り返し襲いかかる。
低い防波堤をあっというまに乗り越えた津波は、原発内の施設を
広範囲にわたり、大規模に破壊していく。
圧倒的な水量は、施設内の地下室や、立坑へ浸水していく。